ひなたのなかのこども 公演情報 風雷紡「ひなたのなかのこども」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    骨太作品だが
    初見の劇団であったが、見応えのある公演だった。その印象は調査し綿密に練り込んだ骨太な作品だと思う。下山事件が題材だが、人間ドラマを主軸に置く見事な公演だ。
    さて、自分が生まれる前の事件ゆえ、リアル情報は持ち得ていない。自分が知っている下山事件は1981年公開の映画「日本の熱い日々謀殺・下山事件」に負うところが大きい。その頃は俳優座に知り合いがおり、同劇団の公演を観ていた。映画は俳優座も関係しており所属俳優が多く出演していた。その映画は同年の日本アカデミー賞で多くの賞を受賞するほどの傑作だったと記憶している。
    さて、本公演も下山事件の沿革を辿るが、その手法は探偵が事件を追究するというもの。この件も映画と同じ(映画は新聞記者が取材)。舞台の雰囲気は当時の状況を彷彿とさせるような美術・音響効果で堪能した。
    改めて、本公演も脚本・演出はもちろん、役者の演技も素晴らしく、秀逸なものだと思う。
    しかし、気になることが…
    (ネタバレBOX)

    ネタバレBOX

    次のことが気になった。
    第一に、主人公の現視点と探偵の追究視点があり、それが交錯して物語が展開する。事件が起きたのが昭和24年7月で、まだ日本がGHQ統治を受けている。対外的には共産主義への警戒、国内的には景気浮揚が重要であるかの描き方だ。その縮図として、日本国有鉄道(国鉄)内における対労働組合(国労)と経営再建(人員整理)だったようだ。その複雑な社会情勢が伝わらない。主人公の人間ドラマにしては、取り巻く情勢の中で苦悩した姿が弱かったと思う。例えば、GHQからの呼び出し場面、組合幹部との交渉場面(少なくとも駅舎へのビラ掲示、赤旗掲)など緊迫した場面がほしい。
    第二に、なぜ探偵は追究することにしたのかという動機面がしっくりこない。依頼主の思惑は後日明かされるが、当初、金銭面だけだったら面白くない。当時の国鉄三大ミステリー事件(他は三鷹事件、松川事件)の中で、下山事件に興味を示した理由はなにか。
    第三に、なぜ今、下山事件を扱うのだろうか?敢えて意味を持たないかも知れないが・・・。思惟か恣意か、はたまた私意なのでしょうか。事件当時の状況が、今まさに対外警戒(領土問題)と景気回復(派遣きり)を意識したと・・・深読でしょうか。隠れテーマがあるとすれば、芝居屋風雷紡恐るべし。
    今後の公演にも期待しております。

    0

    2014/08/19 18:07

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大