痕跡 〈あとあと〉 公演情報 KAKUTA「痕跡 〈あとあと〉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    細い川が大河の如く…心魂へ
    大袈裟に言えば、良くも悪くも引っ括めて過去にしか「痕跡」は残せない。本公演は登場人物の痕跡を細い脇筋のように扱っているが、結末はそれらを紡ぐ太い物語になる。その演出は日常が坦々と流れるが如くである。登場人物は決して善人ばかりではないが、人が持って生まれたもの、または形成されてきた人格を上手く描いていると思う。公演全体が大きな優しさに包まれ、心地よく感じたのは自分だけだろうか。そして感動的なラストシーンは…想ってほしい。
    青山円形劇場という舞台を気にするなというのは無理であろうが、それにしても主たる演劇要素である、脚本、演出、美術・効果はもちろん、役者の演技も素晴らしかった。
    ただ些細なことだが、気になる点が…
    (ネタバレBOX)

    ネタバレBOX

    第一に、探し続けなければ子供を見捨てたに等しい…という旨のセリフがあったと思う。10年を経て余命半年と宣告されて、子の生死を確認しようと行動する点。行方不明(事故)になった当初こそ、必死に探したが、月日の流れとともにその気力も失う。現実にはそうなんだろうと思うと、探索動機としては弱いような気がする。
    第二に、無国籍の状況説明に中国、韓国の不法就労を用いたところ。確かに新聞、雑誌等のメディアで見聞するが、偏見にとらわれないような工夫も必要であろう。
    第三に、本公演の視点はどこか。当然、余命幾ばくもない母親であろうが、この事故/事件に関わった人の人生が大きく左右されるのであれば、加害者と見做される人物の苦悩の痕跡がもう少し描き込まれてもよいのではないか。

    当日パンフで被害者・加害者と峻別している以上、逆立場の両者の苦悩を其々の痕跡として観せてほしい、というのは贅沢だろうか。

    改めて、素晴らしい公演でした。

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    2014/08/12 18:08

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