満足度★★★★
肉まんを誰かにあげたくなる
色彩豊かなポップな衣装、舞台で、歌に踊りに楽しませてもらいました。
パンフレットの中に、「芥川龍之介は『河童』という作品で世間を風刺したと思われていたが、彼自身は、自分自身への嫌悪があった」みたいなことが書かれていて、作品を観ている最中、「どちらが正常でどちらが異常なのか」ということが頭の中をぐるぐるしていました。
河童の国はとても合理的で利己的。
65歳以上は殺してしまう。
一定の能力が無い者は足切りする。
失業して半年経っても職に就けないものは殺して食肉に。だから失業率0%。
そういえば、イギリスだと、50歳以上の場合、新規には人工透析をしないというのが暗黙の了解という話を思い出した。
観終わった後、自分はどんな死に方をしたいか、について考えた。
自分の力で生活する力がなくなってもなお、複数の管をつながれて、
治る見込みがないと分かっても、延命治療を受け続ける意味は何か。
完治しない病に罹った人が「家に戻りたい」と言った時、
危険だからと病院につなぎとめておくべきなのか、
リスクがあるのを覚悟の上で患者の意思を尊重するのか。
作者の意図と少しずれている感想かもしれませんが、
そんなことも考えさせられました。
話は戻って、「肉まんをあげたくなったりする」というシーン。
ちょうど一昨日、中華街で両親へのお土産を弟にもたせたから、なんだかリンクしているようでハッとした。
私は物事を合理的に考えて切り捨ててしまう薄情なところがあるけど、
自分の中にもそんなおばちゃんみたいな一面が出てきたのかと思ってちょっと嬉しい・・・のかな。確かに、誰かに肉まんをあげたくなるのは人間的かも。
役者さんでは、霊媒師役の小門さんの澄んだ、透明感のある演技が印象的でした。