Get a Life(ご来場ありがとうございました!) 公演情報 613「Get a Life(ご来場ありがとうございました!)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    実直さという色
    接点がない限り把握しづらい職業、臨床心理士を描かれている為
    その有無が観劇後の印象に濃淡を添えるようにも思えましたが、
    職業柄を離れた部分で12人の出演者が皆、人は持ちつ持たれつ、
    支え支えられるという関係を築きながら存在出来ることを意識させてくれる。
    そんな姿を各々演じて魅せてくれました。

    それは一方的に支えられているように見える患者側も医療の側の成長を
    支える役割を担っているという、あたかもユニットの作風としていらっしゃる
    「現実の中の理想」が登場人物へも映し出されているかのようでした。

    ネタバレBOX

    そんな関係が築かれている様を主要人物が明確化された台本で12人の
    役者により2時間弱の中へ描き切ることは容易ではありません。
    明確な個人像が見て取れるのだから、もっと掘り下げて描いて欲しいと
    感じられた登場人物が一人二人でないところはとても勿体ない部分でした。

    臨床心理士が患者の心をケアする物語ですので、心理学門外漢の観客と
    してはどんな「金言」を拝聴出来るものかと舞台を観ていたのですが、
    そのような言葉は聴かれません。

    素直になれというというありきたりに感じられる呼びかけ。
    そして号泣しながら抱えていた死にたくない本心を吐露する患者。
    このクライマックスは、お互いが特別でないというか普通と思える言葉や
    感情のやりとりで、ここまで迫真のテンションで引き込まれてしまう場面へ
    辿り着けるものかとカウンセリング(演出)の奥深さに感嘆させられました。

    けれどその奥深さは門外漢には物足りなくもあり、その後の患者夫婦の
    仲睦まじい会話に触れ、「カウンセリングはあったけど、結局は奥さん
    そのものの存在が一番のケアだったのではないか」と勘繰ったりもみたり…!?
    もったいない位の妻という役(!)を演じた春口さんの美しさと佇まいに
    はぐらかされてしまった(?)のは事実ですが、恐らくはこれが実態かも
    しれない臨床心理士のカウンセリングぶりはドラマチックという要素と距離を
    置いた実直さで、それ故に自分の心の揺さぶられ方も小幅なものに留まった
    のは本音です。

    その実直ぶりは作・演出の酒谷一志さんのweb上の稽古場日誌と被ります。
    稽古場ブログは出演者が交代でというのが主流ですが、613では酒谷さんが
    一貫して定期的に、しかも時系列で綴られていて、さながらネタバレの無い
    メイキングレポートです。
    演劇に造詣の深く無い方でも理解できるような用語の説明も含め,丁寧な
    中身の日誌を残されています。

    そのような実直さを窺わせてくれる酒谷さんの描く臨床心理士、そして想いを
    端々、隅々まで込めた作劇が、ハッタリをきかせたドラマチックを詰め込まない
    ことを察するのは難くなく、違和感が無いといえばこれほどまで違和感の無い
    作りもないだろうという一貫性が感じられます。

    613の確かな色というものが伝わってくる作品に触れることが出来ました。

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    2014/07/20 12:28

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