ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる 公演情報 風姿花伝プロデュース「ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい!
    登場人物4人の濃密で本格的な家族の会話劇、堪能しました。

    ネタバレBOX

    ストックホルムの一室、登場人物は家族4人。幼い頃から気に入らないことがあると突然凶暴になったり突飛な行動を取り、自閉症とか鬱とか、様々な診断結果を受けつつ現在は統合失調症ということになっている息子(弟)トーマス、もうすぐ30歳。勉強はできたが、トーマスの世話に忙殺された母親や事業に専念している父親にかまってもらえなかったため常に孤独で、20歳頃から約20年間アルコールに依存し、飲酒が原因で重い障害を持って生まれてきて死んだ我が子のことが忘れられない娘(姉)エレン、現在教師。元女優で、夫と結婚後に男と逃避行をした経験を持ち、現在は演劇を楽しみ支援する金持ちの奥様を演じつつ、トーマスの世話で疲れ果てている母親(妻)のゲンネル。妻に夫婦生活を拒否され、それが妻の更年期の一時的なものであったにも拘らずそのようなこととは露知らず、以後妻には一切手を出さなくなり、現在は買収されそうな自分の事業のことで頭がいっぱいの父親(夫)カール。

    劇場から戻ってくる図は普通の家族が外出から帰ってきたように見えましたが、実際はトーマスが退院したこともあり、一人暮らしをしているエレンを誘って観劇し、帰りたがるエレンを半ば強引に実家に連れてきて久し振りに家族4人揃った団欒を持とうとしたのでした。

    元々バラバラな家族はやはりバラバラでした。少しずつそれぞれのことが分かっていく過程が素晴らしかったです。何があっても家族の関係は切れないとの母親の台詞に、婚姻中に生まれた子どもの父親は夫と推定するとの民法の規定を再確認した最高裁判決があった翌日でもあり、重いものがありました。

    エレンは子供の誕生日である明日自殺しようと考えていました。本来は自分の家で死のうと思っていたのでしょうが、3人が別荘に行くと分かると、誘いを断り、最後は実家を死に場所と定めました。辛いことではありますが、やはり家族に発見してほしいと思うものかもしれません。

    突然凶暴になるトーマスの演技は素晴らしかったです。ここで中嶋しゅうさんが見られるのも驚きです。そして何より、エレンの少しずつ酔いが回っていく様は秀逸でした。シアター風姿花伝の支配人でもある那須佐代子さんの演技に惚れ惚れしました。

    子供を抱かなかったからいけないのか、抱き過ぎたからいけなかったのか、難しく、考えさせられました。

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    2014/07/19 11:39

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