ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる 公演情報 風姿花伝プロデュース「ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大人のための濃密翻訳劇
    ほんとの知的財産とは、こんな劇体験のことを指すのだろう。

    立体化した戯曲である。
    アフター•トークでカール役の中嶋しゅう が「こんな小さな空間なので、とにかくライブ感だけを考えています」と おっしゃっていたが、確かにこの作品は純然たる「会話劇」には程遠い。
    翻訳劇ゆえ「記号」をばら撒いたわけでもない。
    この「バラバラな会話劇」(那須 佐代子)は「狂い」と「受容」の白線に立つ、登場人物たちの激情描写だ。
    「この家族には誰も 俺の質問に答えるものがいない」という台詞があったが、違う。それは「無視をする」愛情法である。

    すなわち、序盤に「硬派」かと わずかばかり感想を抱きつつ、実のところ、三幕を通し、小宇宙(家族)の「友愛」も また捨てきれない、登場人物たちのピュア•エナジーが伺えたのである。そんなカオスが『ボビ―・フィッシャーはパサデナに住んでいる』の愉快さだ。

    ネタバレBOX

    美術、音響、小道具、照明は六角形のごとく、いずれも他ジャンルを邪魔せず、完全に近い調和を図っていた。特に第二部は そうだ。
    時刻が深夜の「2時30分か3時30分」だった設定もあり、ほとんどステージの「火」(ロウソクの炎)を幻影的な それとして活用していたように思う。
    暗がりのなかに映った「狂いドミノ」だった。


    私は、同じ上村 聡史 演出で、中嶋しゅう が今作と似た役で出演した、翻訳劇『千に砕け散る空の星 』を2012年7月に観劇している。ちょうど2年前だ。佐村内さんの「耳が聞こえるようになった」半年後だろうか。素っ裸に なった彼の老体は美術館に収納されるべき 「肉体 美」だった。欲を言えば博物館がお勧めだ。


    「舞台は生もの」 ̄高級レストランのシェフが活きた海老を裂くように、役者は1秒、2秒の「タイム•キーパー」でなければならない。
    もちろん「翻訳劇」も。しかし、中嶋しゅうは 大袈裟にリアクションしているようだったが、共演者が認める役割は、彼は舞台全体における「権威付け」であったことだ。

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    2014/07/16 23:06

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