食卓(秘)法・溶ける魚 公演情報 劇団東京乾電池「食卓(秘)法・溶ける魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    ちまちまするより、大胆に挑んだことが良い
     随分、難しい作品に挑んだな、というのが正直な所である。

    ネタバレBOX

     不条理劇と呼ばれる作品でも、実際には条理の通っている作品は多い。然るに、今作は、生きる為の根本条件である食うこと、捕食者と餌について、食欲についてが描かれているのに、捕食者は、己の同族を捕食している。つまり共食いである。当然のことながら、此処には、倫理的に自家撞着に陥らざるを得ない問題が予め組み込まれているのである。その逃れようのない立場から、捕食者は、自らエクスキューズとして、獰猛だと思われていることは誤りで、実は、養殖場等で餌を食べる時にも、ちゃんと並んで一口齧りとっては最後尾に並んで順番を待つ、との話をするのだが、こんなものは、無論、単なる自己欺瞞である。
     但し、主人公である鰻1も2も、毎日午後7時にやって来て、同類を食わせる笑う男の食事には完全に嫌気がさしており、現在では無理やり口にしても吐いてしまう程なのである。そんなこんなで、もう吐き戻す前から、彼らは壁を作り、一所懸命に補強して、笑う男の侵入を防ぐべく努力してきたのであったが、努力総てが水泡に帰していた。彼らは、遠い海で生まれ何千Kmにも及ぶ旅をし、常に前へ前へと遡る。時には大きな滝を登り、時には激流に逆らってにゅるにゅる・にょろにょろ。而も、これらの努力、前向きな姿勢、ストイシズム、レゾンデ―トル迄の総てが、無意味なように思われるのは、倫理的な自家撞着から離れられないからである。この不条理を越えるべく繰り返される予め無駄と分かっている努力。
     彼らは終に、笑う男を絞め殺した。ハズであった、のに!
     この難しい作品にチャレンジし、格闘した新人たち3人の役者のチャレンジングな精神に拍手を送ろう。然し、その努力と志に未だ、技術や哲学、深い体験が伴っていない為に、道は半ばである。ますますの精進を。志の高さとチャレンジ精神の高さには★4つ。技術的なものには3つ。

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    2014/06/29 11:10

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