満足度★★★
透徹する、負に負ける
連作短編は、多様な立場にある人の、様々な面を浮かび上がらせる。人々をつなぎ止めているのは、連作を貫く、強烈な、現代社会への問題意識だ。旧作2本、新作4本からなる6本の短編は、それぞれが、問題提起と、その回答を、提示する。
扱われている問題の設定が、とても鋭い、と思った。非常に強い、危機意識を、感じさせる。とはいえ、舞台は、バランスが考えられていて、非常に重いものを含みながらも、なんとか、明るく、軽やかな方へと、向かおうとする。
これを、どう見るか。僕には、問題意識が強すぎて、鋭すぎて、もう、オムニバスという形式では、背負いきれていないように、思えた。全体的に、意識的に作り出された、明るさ、軽さが、かえって浮いてしまい、全体を貫くテーマの抱える重さを、より、浮き彫りにしてしまっている、と、感じた。