満足度★★★★★
18代目が、目を細めているのが目に見える
天国の18代目勘三郎さんが、仲間たちとの酒宴の席で、「あいつら、よくやってるよな」といつもの調子で、笑いながら祝宴をしている図が思い浮かび、目頭が熱くなる舞台でした。
本当に、勘九郎さんの躍進ぶりが頼もしい限り。七之助さんも、「白波五人男」の弁天小僧菊之助や、今回のお嬢𠮷三などの系譜の役が板につき、更に魅せる役者に進化されています。
松也さんは、歌舞伎役者としては、まだ新参者の域を出ませんが、このお坊𠮷三役は、お坊ちゃん気質が任に合って、声も容貌も文句なく、彼の出世作になりそうな予感がしました。
過去二度上演されているコクーン歌舞伎の「三人吉三」ですが、今回は、照明を極力暗くして、スポットライトを当てたり、影を作ったりする技巧が駆使されて、より、幕末の退廃美を印象づける舞台構成でした。
静寂の「三人吉三」が、因果応報の悲劇と、三人の盗賊のやむにやまれぬ絆と苦悩をより提示して、お見事でした。
本当に、勘三郎さん、あの世で、目を細めて見守っていることでしょうと確信します。