三人吉三 公演情報 松竹/Bunkamura「三人吉三」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    18代目が、目を細めているのが目に見える
    天国の18代目勘三郎さんが、仲間たちとの酒宴の席で、「あいつら、よくやってるよな」といつもの調子で、笑いながら祝宴をしている図が思い浮かび、目頭が熱くなる舞台でした。

    本当に、勘九郎さんの躍進ぶりが頼もしい限り。七之助さんも、「白波五人男」の弁天小僧菊之助や、今回のお嬢𠮷三などの系譜の役が板につき、更に魅せる役者に進化されています。
    松也さんは、歌舞伎役者としては、まだ新参者の域を出ませんが、このお坊𠮷三役は、お坊ちゃん気質が任に合って、声も容貌も文句なく、彼の出世作になりそうな予感がしました。

    過去二度上演されているコクーン歌舞伎の「三人吉三」ですが、今回は、照明を極力暗くして、スポットライトを当てたり、影を作ったりする技巧が駆使されて、より、幕末の退廃美を印象づける舞台構成でした。

    静寂の「三人吉三」が、因果応報の悲劇と、三人の盗賊のやむにやまれぬ絆と苦悩をより提示して、お見事でした。

    本当に、勘三郎さん、あの世で、目を細めて見守っていることでしょうと確信します。

    ネタバレBOX

    勘三郎さんに淡路屋の屋号を頂いた、笹野さんが、知らない観客は、本当に歌舞伎役者さんだと思い込みそうな程、伝吉の苦悩を好演されていて、嬉しくなりました。

    真那胡さんの、海老名と久兵衛の演じ分けもお見事です。

    演出の串田さんの交流の広さのお蔭で、コクーン歌舞伎ならではの、こうした、異種役者さんの出演が、最近は、無理なく定着しつつあるようで、最初からコクーン歌舞伎をずっと応援してきた観客の一人として、この上なく嬉しい出来映えを見せて頂き、感無量です。

    三人が、血の盃を酌み交わし、盟約を誓う場面で、歌舞伎座に復帰された仁左衛門さんに言及されたり、歌舞伎ファンとして、頬を緩めたくなるサービスもふんだんにありました。

    その義兄弟の契りの場面の後で、三人夜鷹の盟約パロディを見せるなど、暗い芝居の折々に、笑える場面が、さりげなく配置されているのにも、演出の遊び心を感じ、嬉しくなりました。

    歌舞伎の下座音楽を廃した、現代楽器のみの効果音も、今回の舞台では、悪目立ちすることなく、自然とマッチしていて、お見事でした。

    ともすれば、最後の火の見櫓の場の立ち回りは、パフォーマンスに傾きがちなきらいもありますが、今回の舞台の三人の終焉の見せ方は、私としては一番好みだったように思います。和尚の悲しい決断によって、完成した三人の盗賊の真の盟約が、因果応報の縄を断ち切るかのようなお互いの刺違えによって、完結するラストシーンは、美しくも力あるドカ雪の降雪と共に、視覚的にも申し分ない名場面として、今後長く記憶に残りそうです。

    良くやった中村屋兄弟に、心からの祝杯を!!

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    2014/06/18 12:45

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