満足度★★★★
地に眠る力が人体に宿り、踊り出る
京都の寺町通をテーマにしたコンテンポラリー・ダンス作品でした。提灯が吊下がっている和のムードの劇場で、着物と現代服を融合させた衣装をまとった若いダンサーが踊ります。大人数で動きをそろえるシーンのコンビネーションの面白さが特に印象に残りました。ソロや少人数のシーンでは体の形や動きの特徴などをつぶさに観察して、人間一人ひとりを味わいました。
歌舞伎の振付や文楽の手法などを取り入れ、セリフを話したりマイクを使って歌ったりする演劇的な部分も多くあり、楽しみながらチャレンジしているようでした。若者が心身を使って真剣に日本のルーツを探ると同時に、自分たちの今も突き詰めて、その成果が活かされていることに好感を持ちました。
外国人観光客や地元の商店街の店員、お寺のお坊さんなどが登場して、京都の風景を軽やかにコラージュしていきます。私は寺町通のことは全く知らないのですが、舞台上で迷いなく動く人々を見て、描かれているのは紛れもない寺町通なのだと信じられました。
下手袖に設置されたスタンド式の照明が、上手方向に向かってほぼ真横から舞台を照らしていました。客席から照明器具が見えているのは、もしかしたら配置ミスなのかしらと何度か考えました。もし意図的だったのなら、俳優が照明を触る動作をするなどの工夫があるといいんじゃないかと思いました。
緻密な動きが美しくて見とれたのは岡本優さん。振付・構成・演出の北尾亘さんの、意図と動きが一致していてブレない姿も目を引きました。