満足度★★★
平凡な家族に…
公演のプロットは現代にも通じる…いや、この戯曲の初演(1975年)当時よりも社会状況は複雑化している。父権の低下、希薄になった家族の絆、世間的な見栄…、そんな喪失感をブラックコメディにした公演だ。世相は今風にアレンジして描こうとしている印象を受けた。
当日配布パンフレットに演出した中野志朗氏が「すでに過ぎさった時代を描くことが拓く『可能性』とは、一体何でしょうか?(中略)過去を検証することで、未来を探ること。」と書いている。その試みには賛同する。確かに時代状況は変化し、書き下ろした当時の演出では、ズレが生じる。もっと訴えを鮮明にし、その上でシリアスか徹底したコメディ仕立てにするか、メリハリある演出をして欲しかった。芝居は、少なくとも脚本、演出、演技のバランスが大切だと思う。本公演は、そのバランスを少し欠いたと思う。
次回公演を期待しております。