パダラマ・ジュグラマ終演いたしました!総動員3672人。ありがとうございました! 公演情報 おぼんろ「パダラマ・ジュグラマ終演いたしました!総動員3672人。ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    5人の呪文
    “絶対的な欠落と喪失の世界にあって、譲れない物を探し求め守る”という
    おぼんろの価値観がドラマチックに展開する。
    話がシンプルな分、登場人物の変化する内面が魅力的で共感を呼ぶ。
    役者の力量でここまで魅せることに感動した。

    ネタバレBOX

    未来の世界には食べられる自然の食物は存在せず、生き物は皆飢えている。
    工場で飼育されるニワトリを狙って、飢えた2匹のキツネが忍び込むが
    そこで出会ったのは生まれたばかりのヒヨコ、そして
    冷徹な工場長と、生き延びるためにメンドリを装う一羽のニワトリだった。
    出荷される運命にあるニワトリたちは、今日もコンテナに乗せられて行く…。

    衣装をつけた役者5人が案内してくれるいつものおぼんろスタイル。
    演劇は日常の延長線上にあって、しかもある時を境に非日常に切り替わる。
    その境界線上にある微妙な時間が楽しめるひととき。

    ストーリーはシンプルだが、その分登場人物の変化を追うのがメインになる。
    情け容赦ない工場長(さひがしジュンペイ)の、奥行きのある表情と台詞が素晴らしい。
    冒頭から時間を遡る構成で、彼が単なる悪役でないことは判るが
    声にだんだんと疲労感や迷いが滲み出してくるあたりがとても良かったと思う。

    生きるためにオンドリである事を隠し、メンドリを装うリンリン(高橋倫平)の
    愛情表現が切なくて泣かせる。
    “オネエ”な芝居なら世間にあふれているが、作り過ぎない自然な女らしさがあり
    笑いを超えた説得力あるラブストーリーになった。

    病気の兄弟に栄養のある物を食べさせたいと、
    仲間のキツネと一緒に工場へ忍び込むキツネメグメを演じたわかばやしめぐみさん、
    途中から業を煮やしてひとりで決行しようと決める時の表情に迫力があった。
    追いつめられた者の必死の闘いが、哀しくなるほど迫って来る。
    生歌もとても素敵だった♪

    もう1匹のキツネトシリモを演じた藤井としもりさん、
    いい加減で嘘つきで軽やかなキャラクターを生き生きと演じて素晴らしい。
    彼の変化がストーリーを牽引すると言ってもいいだろう。
    生まれて初めて自分を信じてくれた相手は、食べてやろうと思っていたヒヨコだった、
    というセンチメンタリズムをドラマチックな行動で完結させる。
    おぼんろの価値観を体現するキャラクターとして、その変化が鮮やか。
    「どうしてうまくいかないことばっかりなんだ!」(たしかそういう意味)
    という台詞が忘れられない。

    工場で生き伸びたヒヨコ、タックを演じた末原拓馬さん、
    無垢で世間知らずで、信じては裏切られる純な役はやはりぴたりとはまる。
    ラストはやっぱり泣かせるなあ。

    作品全体としては、「ゴベリンドンの沼」の“負の存在”、“人の悪意”等のダークさや
    「ビョードロ」のジョウキゲンのような強烈な設定に比べると
    みんながいいヤツでややインパクトが弱まった印象か。
    その分登場人物の内面に集中出来たのは役者陣の力だと思う。

    演出的には少し“走り過ぎ”かな(笑)
    ゴベリンドンのような上下の動きを一度観てしまうと
    2階部分が一ヶ所だけであとは平面を走るだけ、というのが普通に見えてしまう。
    過去公演の記憶と期待値という厄介なものと闘わねばならないわけで
    会場や客席の問題も含めて、そのハードルは常に高いままだろうと思う。

    久しぶりに5人集結という高揚感が伝わってくるような公演だった。
    「パダラマ・ジュグラマ」という呪文の意味、それはそのまま
    おぼんろのメンバーが日々胸にいだいている言葉ではないかと思った。


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    2014/06/15 00:57

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