満足度★★★
初てがみ座
てがみ座は、今回初めて観る。
ハイリンドの多根さんが客演するというので観ることにしたのだが、それまで劇団の名前さえ聞いたことが無かった。
評判が良さそうなので楽しみにしていたが、内容についての前情報はほぼゼロ。民俗学についての話らしいと小耳に挟んだくらいだ。
客席を見回すと、割と年齢層が高そう。平均すると50代くらいだろうか。
開演に遅れてくる人や、上演中にガタゴト大きな音を立てて身動きする人などが多かったのが少し気になったが、携帯などは鳴らなかったので本当に良かった。
肝心のお話はといえば。
戦中から戦後にかけての日本が舞台。
宮本常一という実在の民俗学者が主人公。彼を含む研究者たちの集まり、“アチック・ミューゼアム”とそのパトロンである渋沢敬三の物語。
民俗学に対する情熱を題材にしながら、それに絡めて戦争をも描いている。それと夫婦のあり方までも。
ドキュメンタリーもののスペシャルドラマを観たような感じ。
硬すぎず、ちょっとした軽みも交え、でもってしっかりと人間を描いていて見応えがあった。
劇的に、わーっと面白い!という訳ではないが、じんわり素朴に「よかった」。
役者さんがみなさん達者で、何の危なげもなくて素晴らしい。
渋沢敬三氏の息子さんが観に来られたらしいが、「思い出を観ているようだ」とのこと。
脚本家の方がツイッターで発信したのだが、それを読んで──私が話を書いたわけでもないし、演じたのでもないが──なんだか嬉しくなった。
終演後のアフタートークも、いろいろと興味深いお話を聞けて面白かった。
民俗学は何となく興味はあったのだが、この機会に宮本氏の著書『忘れられた日本人』を読んでみようとおもう。