プルーフ/証明 公演情報 DULL-COLORED POP「プルーフ/証明」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ドアの開閉の演出意図は?
    ずっと気になっていた谷さんの演出作品、初めて拝見しました。

    まず一言で言うなら、「呆れるほどの佳作」です。

    サイン、コサイン、タンジェント、√あたりが出て来た頃から、算数得意少女の足を洗い、すっかり数学音痴女子学生に成り下がった還暦目前おばさんとしては、観てわかる芝居なのかと大変恐怖心を抱いて観に行きましたが、全く心配いりませんでした。

    これは、人間関係の照明劇なんですね。心と体が融合して、それが一つの形に結びつくまでの綿密な公式を提示されたような芝居でした。

    何よりも驚いたのは、山本さんの役者としての資質の芳醇さ。声に力があり、声優としてもご活躍だということが納得できました。
    先日、従弟の長男が、アニソングランプリで、準グランプリになった映像を観たのですが、彼も、容姿が山本さんにそっくりでしたから、声優向きの体躯というのがあるのかもしれないと思いました。

    他の公演を観ていないので、比較できませんが、この芝居、ハル役の俳優の演技如何で、作品の成果が全く違ってしまうと思うので、その点からも、山本さんのキャスティングは大成功だと感じました。

    遠野さんも、宝塚ご出身とは思えない自然な演技が、姉役のスタンスを的確に表現されて、お見事でした。

    ただ、一つ、非常に気になったのが、庭に出るドアの開閉のジェスチャーが、人によって、状況によって、あまりにもマチマチなこと。架空のドアを開閉する動作が数えきれない程繰り返されるので、もしかしたら、ここにも谷さんの緻密な演出意図が隠されている可能性も感じたのですが、そこまで、深読みできないと、逆に、演者の動きが気になって、演技の粗のように感じられる欠点とも受け取られ兼ねず、むしろ、ドアはない設定での芝居にした方が、芝居の中身にドップリ浸れるのではないかと感じました。

    ネタバレBOX

    天才的な数学者を父に持つ、キャサリンとクレアの姉妹。妹のキャサリンは、数学者の資質を父から受け継ぎ、父子という関係を超えた師弟関係も育んで、痴呆の進む父親の介護のために、学業を断念して、父親の住む家に戻って来ました。
    姉のクレアは、家族への情愛が薄いわけではないのですが、妹と父親の関係にある意味嫉妬めいた感情もあるのか、二人とは距離を置いて、経済面で、父親と妹の生活をサポートしてきました。
    父親が亡くなり、父親を敬愛していた教え子であるハルが、父親の残した研究ノートを整理読破する目的で、キャサリンの所へやって来ます。
    奇しくも、その日は、キャサリンの誕生日。かつてキャサリンがハルと初めて会ったのも、誕生日の日でした。

    父親の研究ノートは、103冊とかあったそうで、まず小保方さんの研究ノートの数との落差に、勝手に受けてしまいましたが、ハルとの性的結合が成立した後で、キャサリンが彼に渡す1冊のノートが明るみに出た一幕ラストから、急激に舞台の空気が一変します。

    二幕は、果たしてこのノートは誰の手によるものかという視点から、舞台が周り出し、そのことが証明されるまでの過程で、登場人物3人の意識や、関係性が、より具体的に、観客に向けて提示されて行きます。

    何という、スリリングで、知的で、巧妙な脚本かと、兜を脱ぐ思いがしました。

    カラダが結ばれたことで、心も同時に結ばれたと思ったキャサリンが、心を許して彼に渡した秘密のノート。紆余曲折ありながら、ラストシーンでは、再び、二人の心は結ばれたと暗示して、幕となります。

    小粋!素敵!ブラボー!!

    機会があれば、演劇を愛する大切な家族に是非見せたいと思える、素晴らしい舞台作品でした。

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    2014/06/04 09:34

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