浮世(うつつ)けもん 公演情報 劇団禄盟漢「浮世(うつつ)けもん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 「出会い頭」は不自然だが、相当おもしろいっ
    幕末の新風が、高田馬場に舞う!

    舞台セットは、江戸城下に軒を連ねる貧乏長屋と茶屋、畳三畳ほどの「一間」である。随所に白玉、緑玉、紅玉を串刺す団子が町民の頬に含まれ、劇場を出ると「どら焼き」を購入する観客もいるほど!


    まるで「時代劇」かのようにワン・シーンが軽やかに移り、「起承転結」は常に一定のスピードであった。
    伊吹文明氏は 日本の身分制について、「日本人は『士農工商』でうまくやってきた」と述べ、一部容認する姿勢が報じられている。
    この封建制度が、『浮世けもん』の メイン・テーマであった。


    タイトルどおりの“うつけ”はるを好演したのは大山京子だ。元々「捨て子」で、拾われた長屋住民のセリフを反芻するだけであるが、彼女には「◯術の才」があり、蘭学を独学する次郎(星野 良明)の運命を大きく変える。



    緻密なシナリオは役者陣の力になったはずである。
    実は『浮世けもん』を観劇する1時間前、伝統芸能「浄瑠璃」「日舞」「かっぽれ」を目の当たりにしていた。60代〜80代の女性が演じるショーは、300年前から継続する「元禄文化」花盛りの冷凍保存だったのかもしれない。しかし、それは愛知万博に出展された冷凍マンモスと同じ「異質さ」だった。つまり、時代劇においても指摘できるポイント“形式美に こだわりすぎると現代人は退屈”である。

    例えば、伝統芸能「歌舞伎」は世界遺産に登録されているが、少なくとも、明治期以前は その上演時間が半日であったらしい。神社で午前中に歌舞伎演目が始まり、日没とともに終了する。そうしたナチュラル・タイム・ロスは一分、一秒に振り回されるこのない、江戸町民ならではのライフスタイルが説明する。
    『浮世けもん』は、新派より呪縛化した“形式美”も保ちつつ、「時代劇」のカット割を緻密なシナリオに導入していたから、映画『武士の家計簿』などを鑑賞した女性客も 没頭できるパッケージだった。

    ネタバレBOX

    星野も端正の整ったイケメンだし、清水穂奈美(お鈴)の 強かさ と 弱さを内存する演技は、いつか鑑賞した黒澤作品をリバースしていた。
    それにしても、中堅武士・朝霧成吉役の川田翔也は格別だった。「町人だから 出島は難しい」と身分制を盾に次郎を突き放しておきながら、算術試験を面談する あたり「論理思考」だと思った。
    派手なリアクションをせず「悶絶」する その姿形は、マスコミにスキャンダル・ソースを流す霞ヶ関幹部の半歩前だろう。
    すなわち、『水戸黄門』の勧善懲悪ではない、リアリストである。

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    2014/05/06 10:36

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