「君はジャーナリストだよ」
イケメン劇団といえば、演技ではなく、「いかにファンを喜ばせるか?」が最大のポテンシャルである。
『ミュージカル・テニスの王子様』を手掛けたプロデューサーも、「女性は未発達のカラダに弱いんですよ」「アンケートによれば99%女性です」を認めている。こうしたミュージカル戦略が、後に映画『愛と誠』(2012年)などの作品において絶大な人気を博した斎藤工のメイン・キャスト起用であった。
キャスト生写真をベッドルームに飾りたいがため、何十回もリピート観劇する女性客がいる、イケメン劇団特有の「現象」をご存知だろうか。
私が観劇した『マジハウス』が、いわゆる そうしたマーケットに基づく舞台であったことは間違いない。「スタイリッシュ・ボーイズ」なる名称から、爽やかで、長身で、美男子が脚や腕を早送りに踊る舞台をイメージできるはずだ。
だが、チラシに謳うような「歌」や「踊り」は控えめであり、「青春劇」のフィールドで勝負をしてきた そのアプローチには好感が持てた。
私は なぜかキャスト・ファンが陣取る「プレミアム・シート」の座席であった。これは美男子を「テーブルの向かい側」程度により観察できる「距離」だ。
そうした「距離」は、伊藤 孝太郎、花沢 将人、中口 翔 等の透き通った、フレッシュであり、ほのかな甘酸っぱさまで感じさせる「美男子」の香りを配達する。
あらすじ は こうである。シェアハウスに住む若い世代は家賃を滞納していた。それに対するコミットが、友人や仕事仲間を集め、大家・笹原 静香(鳳 恵称)へ その売上金を支払う「イベント企画」であった。
「劇中劇」というか、旗揚げ公演につきものの「あるある」だろう。
ただ、この造り方は疑問である。
終盤に至るまで、鯖井戸 守(伊藤)のアイデンティティを巡る内的な確執、明日見(花沢)との 友情、エルヴィス・プレスリー(ウチクリ内倉)が果たすメッセージの包括が、『マジハウス』の「青春劇」を汗の結晶に精製したのにもかかわらず、「劇中劇」の後者は それを妨害してしまったのだ。
要するに、サッカー・パフォーマンスなどの「一発勝負」は、温かい集中力を奪うアドレナリンであった。
ネタバレに追記あり