おはなし 公演情報 tamagoPLIN「おはなし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    さりげなくとんでもなく高い表現のクオリティ
    若手演出家協会の最終審査を観て、作り手の公演をぜひ見たいと思い足を運び、一つずつのシーンに満ちるもののクオリティの高さに驚く。

    ジャンルを言い表せないような(ジャンル分けをすること自体あまり意味のないことかとも思うのですが)、これまでにあまり体験したことのない質感と様々な表現の切っ先を持った舞台でした。

    秀でた表現がさりげなく惜しげもなく織りこまれていくので、一瞬たりとも舞台から目が離せず。

    最後に姿を現した主人公の想いの肌触りにも心を捉われました。

    ネタバレBOX

    開演前は、舞台の中央に棺桶がおかれただけのシンプルな舞台。
    そこが花いっぱいの世界へとひろがるなんて予想もしなかった。

    その花たちの登場のシーンに目を瞠る。最初は家族でやっていた花札の記憶をちょっとオーバーにデフォルメしただけかと思いきや、一つずつの花が舞台にランダムに舞台に現れ、やがてそれらが静かに舞台を巡り、返事をし、お相撲の懸賞の如く名前を提示し、さまざまに開き自らを主張していくという舞台の広がり方にぐいっと惹き込まれる
    ちょっと震えが来るくらい、広がりの勢いをもった圧倒的な表現だった。

    そこから主人公と花たちのさまざまなベクトルでの関係性が生まれていきます。
    役者たちが時に全体の中で献身的に、あるいは個人の力をふるって作り上げる、空間のメリハリにどんどん引き込まれる。
    舞台全体のミザンスの作り方やフォーメーションの組み方、言葉遊びにも刹那の遊びにとどめず、つながりの意外性や物語のコアへとつながっていくような寓意がしたたかに込められていて。また伝言ゲームのような言葉の伝達なども、描かれるべきニュアンスを良く引き上手いなぁと思う。

    主宰のダンスのしなやかさに目を奪われ、役者たちの歌唱力にも心惹かれ、そしてなにより、その世界が母の死を受容していく主人公の心風景として観る側に伝わってくることに感心。

    衣装や役者たちのメークにも描かれるべきものをしっかりと表す力があり、棺桶の模様をちょっとしたプロジェクトマッピング的な手法で描くのも効果的。

    初日ということもあってか、ラストシーンの前の集団での時間の作り方などには精度を作りこめなかった感はありましたが、よしんばそうであっても、全体を通してその表現のしなやかさと創意の踏み出しにずっと捉われっぱなし。
    主人公が母親の葬儀であいさつする態での最後の台詞もしたたかだなぁと思う。舞台が紡いだ、主人公がその想いに至るまでの道程も心に残りつつ、一つずつの表現のクオリティからやってくる、作品の印象とは異なる、作り手がこれまでになかったエンジンで紡ぎ出す作品の質・量それぞれへのわくわく感が終演後も止まりませんでした。

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    2014/05/02 01:36

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