期待度♪♪♪♪♪
楽屋よ、戻ってこい
鏡前には茶碗が置いてある。
三日月を映す湖のように、茶碗の中に注がれた緑茶は静寂である。
誇りとライバル心が交差する、本番前の共同生活が、「女優」という生き物の牙を演出する。
つかこうへい はある名言を遺した。
「人間にとって大切なのは、何を恥かと思うかです。」
「恥」が人間らしさだとすれば、「女優」は「恥」を紡ぐ専門家だろう。
そして、頂なき山頂を目指す自立心が、いつしか「恥」を演技から離れた形で忘却させる。
「女優」という繊維質の衣装を身にまとう裸の女達。
それは、誰にでも等しく与えられる同一の称号であり、誰も保有していない空虚である。
情念が茶碗をプカプカ揺らす。