ケンゲキ! 宮沢賢治と演劇 公演情報 シアターオルト Theatre Ort「ケンゲキ! 宮沢賢治と演劇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    銀河鉄道の夜の謎はヴァリアントの豊富さから?
     1974年、天沢 退二朗、入沢 康夫らが中心となって行われた原典批評による宮沢 賢治全集は、徹底的なテキストクリティックによって一時期を画した。筑摩書房版である。この全集のテキストクリティックの過程で「銀河鉄道の夜」オリジナルには、大きな改稿だけで初稿に対して3回の改稿が行われたことが判明した。初稿が書かれたのは1924年と推定されるが、第4稿が書かれたのは1931年頃と推定されている。殊に、3稿迄と4稿には大きな差がある。
     今作は4稿をベースに北村 想が脚本を起こしたものだ。そして今作の特徴は、賢治が妹、トシを失った後の喪心の旅の中で書いた「青森挽歌」が挿入されていることである。

    ネタバレBOX

     本編、「銀河鉄道の夜」では、カンパネルラが原作者、賢治に向かって本当のこと、本当の幸せとは何かに就いて質問を発する天がユニークである。北村の到達点としては、弱者、ジョバンニにとって、他人が総てカンパネルラであるよいうな高く遠い倫理的到達点を示したことだろう。無論、現実の中で、この決意が揺らぎ、失われてゆくことが大方のパターンである。然し乍ら、今作によってこのように高い倫理的宣言が為されたこともまた事実である。できれば、この事実を観客である我々一人一人が己のものとして実践して行きたいものである。
     因みに賢治自身、結核という業病を抱えながら、農業技術者として、また教師として農民や子供達の為に高い倫理と知を発信し続けた実践の人であった。
     蛇足ながら、賢治が教師をやっている場面で跳び撥ねたり音楽的にリズムを取り入れたりしながら授業を行うシーンがあるが、あれは実際に賢治の授業を受けた生徒達の証言を基に作られているのであろう。
     演出的にも様々な工夫が凝らされていて楽しめる。

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    2014/04/06 02:19

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