Re:verse 公演情報 アヴァンセ プロデュース「Re:verse」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    かくも過酷な生存
    “生き残る”ということは、かくも過酷なことなのか。
    東日本大震災の翌年、再び巨大直下型地震に見舞われた関東地方を舞台に
    ひとりの女性ジャーナリストがインタビューを試みる。
    家族を喪った被災者を怒り狂わせ、二度目の試練を与えるかのような彼女の質問。
    答えるうちにのたうちまわるように乱れていく被災者たちの心情。
    緊張感ありまくりの展開となぜそこまで、という疑問が解けるラストが秀逸。
    生き残った人々は皆、自分に出来なかったこと、出来たはずのことを探し
    自分を“許されざる者”として糾弾し続ける。
    それは“助かって良かった”という安堵の感情からは程遠いものだ。

    ネタバレBOX

    舞台中央にテーブルと椅子が置かれている。
    まるで足場を組んだような金属製の階段と2階部分が
    それを見下ろすように囲んでいる。
    女性ジャーナリストが夫と子どもを置いて家を出るまでの顛末のあと、
    その女性が被災者にインタビューをする場面に移る。
    父を救えなかった男、義母を喪った嫁、津波にのまれて娘の手を離してしまった母、
    仲間を置き去りにして逃げた消防団の男など、皆胸に暗部を抱えている。
    ジャーナリストは彼らに容赦無い疑問を投げかける。
    例えば「元々不仲だったのではありませんか?」と。
    「たとえそのために死人が出ても真実が知りたい」と言って憚らないその態度には、
    マスコミの人間特有の傲慢さが前面に出ていると感じさせるが
    やがて彼女自身、置いて来た夫と息子たちを喪った身であり
    同じような立場の人たちが一体どうやって生きているのかを知りたいという
    悲痛な思いで質問しているのだと判る。
    そして彼女を強く批判していた消防団の男が、全てを話したあと自ら命を絶つ。
    誰もが巻き戻せない時間の中で、後悔の海で溺れるようにもがいている…。

    被災地の人々の心の裏にあるのは、喪失感と同じくらいの“後悔の念”であったと思う。
    こんな喪い方をするなら、別の選択をすれば良かったというどうしようもない後悔。
    あまりに唐突で暴力的な奪われ方をすると、もはや死者に非を見出すことなど
    不可能であり、非は全面的に生者に移行する。
    背負いきれない自己否定と闘い続ける苦しみは、生きる意味も気力も奪う。

    作者は徹底的に“後悔する人間”に密着し、フラッシュバックのように繰り返す
    「あの時別の選択をしていたら」という思いを肯定するかのように描く。
    それは“後悔してもはじまらないから前を向いて生きよう”という世間の流れや
    時間が経って次第に薄れる記憶と真っ向から対立する。
    人は後悔する生き物なのだ。

    私は前回の公演を観ていないが、大きな空間を良く作っていると思った。
    群像の中で、ひとりのジャーナリストが真ん中で喧嘩を売るように挑んでいく姿が
    やがて同じ喪失感を共有する者の必死な思いであったと判る構成も上手い。

    冒頭から子役が達者なのだが、技術が勝っているような印象を受けた。
    死ぬ前にカメラの前で語った消防団の男の告白には泣けた。
    他人には「生きるんだよ」と言いながら、家に帰って首を吊る男。
    人間の抱える矛盾の優しさと切なさを感じさせるキャラが素晴らしい。
    配役表があったらな、と思った。

    毒っ気を振り撒く作者のイメージと重なりながらも
    根本にある“不完全な人間を受容する”姿勢が感じられて、
    他の作品も観てみたくなった。


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    2014/04/04 01:43

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