脚本に真摯に向き合っていた
都内の銭湯が激減している。
ピーク時 昭和43年(1968年)に2687軒 あった銭湯が、平成22年(2010年)になると わずか801軒しか営業していないそうだ。(東京都浴場組合)
スパ、サウナ施設、健康ランドの需要は、必ずしも各家庭に浴槽設備が取り付けらた「豊かになった」その一点が理由ではないことを物語る。
銭湯の煙突から吹くモクモクは、燃料を燃やすさいの「塵」に過ぎないのだろうか。
できれば、家族の絆だとか、地域浴場で育まれる輪だとか、そうした「垢」が大空に昇っていく物理学と考えたい。
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60歳、辞める その日まで 家庭を顧みず、ひたすら貢献する生活だったサラリーマンを、「カイシャ人間」という。栄養補助飲料のCMに「亭主 元気で留守がいい」とあるが、近頃は定年退職後、地域コミュニティを遠ざけた「新・ひきこもり」男性が 多く出現してしまうそうだ。
本作『あした天気になぁれ』は そんな「予備軍」が2名、病気のため製材所作業員を辞めた男性が1名、若者が1名 「同居する話」。
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佐藤一也氏が終演後に挨拶したとおり、「とても素晴らしい脚本」だった。
これは演出上のハットトリックかもしれないが、佐藤一也氏 演じる◯と◯が「母親」を語り合った時、お互い「敬語」であったのはとても心地よく、「予備軍」の人柄を感じさせた。
女性キャストは 主に療養者の親類である。「自立」を追う夫人がいれば、「お節介な」おふくろさん もいる。
シーン数とは比較できない、「時代の岐路」を、気品溢れる演技により伝えてくれた。
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何千回だろうか。
窓ガラスもヒビが割れてしまったに違いない。
「明日、天気になぁれ」
ピクニック前日に、晴天を願うキラキラした眼差しを耐久する窓ガラスの苦労…。
一方、1987年にタレント高田純次氏を起用して翌年、流行語大賞を受賞した栄養補助飲料CMが世間に広めた そのフレーズは衝撃だった。
「5時から男」。
さて、これからの「予備軍」が使うコトバは どちらなのだろう。