痒み 公演情報 On7「痒み」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    強かな人生の切り出し方
    初日を拝見。

    物語の仕掛けが見えるまで観る側をしっかりと捉えて離さない役者たちの力に捉えられ、その仕掛けに気づくと、こんどはシーンや 登場人物の描き出す刹那のひとりずつに編み込まれた作り手の寓意にも深く惹きこまれて。

    舞台に放たれ、束ねられ、やがて踵を返して浮かび上がる女性たちの生きていく感覚や想いやその歩みには、この作り手と役者たちだからこその切っ先があって。
    その力量の重なりから訪れるものに、がっつりとつかまってしまいました

    ネタバレBOX

    久しぶりに集まった女性たちがそれぞれに抱く感情や想いの話かなぁと思って観ていたら、物語の思いもよらない展開にびっくり。

    共に乗った飛行機の墜落で女性たちは辿りついた場所での時間に放り出される。そこで暮らす日々の情景に女性たちの人生にかかわる様々な寓意が織り込まれていきます。
    最初は彼女たちが環境の中で生きていく姿を追っていたのですが、やがて、物語の寓意がほどけていくと、彼女たちがその場所で変容していく姿の向こうに現れるものに、深く取り込まれていく。
    分かれ、時に交わりあるいは離れていく女性のグループ内の関係。
    憧れや嫌悪。
    妊娠・出産、子供、離婚や再婚、
    家事、食べること、帰ることや帰らないこと、家庭を守ること、そうして自分の世界を貫くこと・・・、
    異世界の設定や彼女たち自身の衣装・風貌の変化とともに表現されるものが、解けて生身の女性たちのありようとなり、それぞれの個性となり際立っていくのはかなり凄い。
    たとえば虫は世間とか噂とか風聞のようなものだろうか。
    では、おかしな形をした果実やシェルターに紡ぎこまれたものは?
    森や砂漠の空気の肌触り、戻ることと戻らないこと、
    そもそも旅行券に込められた寓意とは・・・。
    舞台に置かれたものの一つずつが、いろんな速度や重さや質感と共に女性たちの歩みや彼女たちの想いを纏っていく。
    それらが、やがて垣間見える女性たちの人生にリアリティをあたえていくのです。

    様々なシーンの意図を切り出し映えさせる美術や照明にも創意があり、原点となる記憶の差し込み方や、心情を伝える映像もダイレクトにロールに訪れる色を観る側に注ぎ込む力があって。
    そして、なによりも、一つずつのキャラクターのコアを作りこみ、様々な語り口をしなやかに重ね、変化にぶれることなく貫いていく女優たちの役者筋が、一見奇異にも感じる物語のシーン一つずつに異なる密度をつくり、バラけさせることなく積み上げ、やがて表に翻って女性たちの歩んだ半生の肌触りや質量を観る側に伝えていくことに感嘆。

    終盤、寓意に満ちた物語が老婆となったサークルのメンバーが集い語るそれぞれの人生へとほどけるなかで訪れる、一人ずつの異なった、決して奇異ではない、でも凡庸ではない歩みの重なりに心捉われる。しかも、そのシーンが彼女たちの終焉ではなく、更なる時間を歩むための通過点のようにも感じられて。

    またウィットもいろいろに織りこまれ、物語に織り入れられた企みも、すぐにほどけるもの、ゆっくりと姿をあらわすもの、作品がすべて晒され劇場からの帰り道にふっと気づくものなど、様々な深さや広がりを観る側が受け取ることができるように仕掛けられていて、作り手のセンスに加えて豊かな創意と企てのしたたかさに感心。

    観終わって、単に女性たちの人生のありようを観たというだけではない、もっと広がりや奥行きを伴った感覚に深く浸されたことでした。

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    2014/03/27 12:15

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  • りいちろさん!!
    とっても丁寧な観てきたコメントを下さり、本当にありがとうございます!!
    今回は作品をお届けする側にいたので、自分では分からない事が沢山ありますが
    サリngROCKさんの作品を観ると本当に帰り道で
    「あのシーンは…」「この場面が…」と思い返して、ただただその事実、物語を観たと
    いうよりも、もっと広いものを思ったりします。
    その感覚を共有できていたとしたら、こんなに嬉しい事はありません。
    まだまだ未熟ではじまったばかりのOn7ですが、これからも精進してまいりますので、
    今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!
    どうもありがとうございました!

    2014/04/12 23:42

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