満足度★★
社会構造と良心
資本主義社会の非情さや人間のエゴをミステリー仕立ての物語の中に描いた名作戯曲を、ストレートに演出していて物語の魅力は伝わりましたが、演技が物足りなく感じました。
婚約のパーティーをしている家族の所へ夜に警部が訪れ、そこにいる皆がある女性の自殺に関係あることが明らかにされた後、意外な方向に話が展開するストーリーで、ただの犯人探しに止まらない、社会や良心の在り方について考えさせる内容でした。
ラストでは、奥に現れた女中が縛っていた髪をほどき赤い照明で照らされ、壁面にはウネウネとした模様が映し出され、女中がこの一夜の騒ぎを陰で操っていたかの様に描いていましたが、そこまでの抑制の効いた演出に対して唐突で過剰な表現に感じられました。
半数程の役者が翻訳劇ならではの台詞が馴染んでいなくて、敢えてわざとらしく演技しているのか、そうは意図していないのにわざとらしく見えてしまっているのかがはっきりしない演技となっていて、もどかしく思いました。
手前と奥に円形の穴がうがたれた壁が立ちトンネル状に見える幅より奥行きの方が大きいステージが新鮮でした。
舞台セットの形状のせいだと思いますが、声が反響してエコーが掛った様な音響になっていて、聞き取れない訳ではないものの違和感がありました。