楽屋 公演情報 劇団チョコレートケーキ「楽屋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    浮遊する女優魂
    世代を超えた女優たちの本音と哀愁が凝縮された「楽屋」という空間。
    脚本の面白さ、メリハリの効いた台詞と間、キャストの素晴らしさを堪能した。
    劇中劇ながら、これほど「三人姉妹」に感動したのは初めてだった。
    暗闇を際立たせる照明が劇的で素晴らしい。

    ネタバレBOX

    濃い闇に浮び上る3つの化粧台、上手側に座る女優(伊東知香)は
    間もなく幕が開く「かもめ」のニーナ役を演じる準備に余念がない。
    後の2つの化粧台では2人の女が黙々と化粧を続けている。
    ニーナが出て行った後、2人は互いに担当した役を振り返り披露し合う。
    しがないプロンプ人生でも役には愛着があり、誇りもある。
    やがてその2人、顔に火傷の痕がある戦前の女優(松本紀保)と
    首に大きな切り傷のある戦後の女優(川田希)は、どちらも幽霊であることが判る。
    そこへもうひとり、枕を抱えた元プロンプターの女優(井上みなみ)が現われ、
    ニーナ役の女優に向かって「自分にニーナの役を返せ」と詰め寄る。
    楽屋には時代を超えて女優たちの魂が浮遊している…。

    生きている女優も死んだ女優も、舞台にかける情熱は同じ。
    時代の違いはあるが、ついに表舞台に立てないままプロンプターで終わった2人が
    命果てた後も楽屋に執着する気持ちが怖ろしくも切ない。

    松本紀保さん演じる三好十郎の「斬られの仙太」、口跡と気風の良さが心地よく
    その台詞を愛唱する気持ちがビシビシ伝わってくる。
    伊東知香さんのニーナ、井上みなみさんのニーナの後で聴くと
    その経験値と味わいが一段と深く共感を呼ぶのは私自身の世代に近いからか。
    “いろんなものを犠牲にして”ここまで来た意地と気概にあふれた独白が
    現代の女優らしくリアルで素晴らしかった。

    「かもめ」も「マクベス」も「三人姉妹」も、戯曲のエッセンスを感じさせて本当に楽しい。
    あの「三人姉妹」のラスト、思わず別公演として観てみたいと思った。
    偉大な戯曲に女優たちの思いを乗せる脚本が巧みなのは言うまでもないが、
    特に衣装を変えることも無くショールひとつで切り替えるシンプルな演出が秀逸。
    前半幽霊2人の動きが抑えられていたことも、
    後半の劇中劇でほとばしるような情熱との対比が鮮やかになって効果的だと思う。

    チョコレートケーキが昨年9月に上演した「起て、飢えたる者よ」で
    渋谷はるかさん演じる管理人の妻が変貌する様を観た時
    表面上の顔と、秘めた本性とのギャップをえぐり出すのが巧いなあと思ったが
    生と死、時代の違い、キャリアの差などを鮮やかに対比して見せて素晴らしかった。
    改めてチョコレートケーキは全方位的に優れた劇団であると思わずにいられない。



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    2014/03/16 01:38

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