若手演出家コンクー2013 最終審会  公演情報 一般社団法人 日本演出者協会「若手演出家コンクー2013 最終審会 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    個性満載での面白さ
    たまたま、決勝進出のある芝居を、従前に観たものの再演として観にいったのですが、その空間や空気が面白く、チケットシステム(通常の1公演分の料金で4公演すべてを観ることができる)にも乗っかって、全部を拝見しました。

    ほんと、個性の被らない4団体、たっぷりと楽しむことができました。

    ネタバレBOX

    観た順に・・・

    1.山下 由 『ハミング イン ウォーター』

    Pitymanの公演としてこりっちに登録があるので、少し詳しめの感想をそちらに書きました。
    多分、戯曲を読んだだけでは伝わりえないであろう空気が、しっかりと舞台に紡ぎ出されていて心を奪われました。

    2.スズキ拓朗 『FRIEND~踊る戯曲~』

    評判は従前からきいていて、一度観たいと思っていた劇団主宰の作品ということで、わくわくと足を運びました。
    安部公房の戯曲はとても昔にですが読んだこともあり、また、他劇団で観たこともあり。
    舞台が始まると、忽ち美術にも舞台のミザンスの作り方や役者たちの動きに目を奪われる。ダンスなどにはそれ自体のメソッドで語るのではなく、物語にしっかりと紡ぎこまれて観る側を捕まえていく感じがあって。
    だから、戯曲に対して舞台が浮くことなく、着実に戯曲の世界を観る側に歩ませてくれる。そこには、演じることの洗練があり、戯曲のシーンが、作り手の
    表現と共に鮮やかに研がれ、切り出されているように感じました。

    ただ、観終わって、戯曲の世界を戯曲どおりの枠のなかでがっつり楽しみはしたし、役者やダンサー、さらにアコーディオンと歌の醸し出す雰囲気にも心惹かれたのですが、なんだろ、これだけの表現力を駆使しているにも関わらず、戯曲の印象への忠実さがとても強くのこり、戯曲をこのメソッドで表現するからこその新たな広がりというか、表現だけではなく、その表現を手段として戯曲を踏み越えて訪れるなにかが、今一つ実感できませんでした。
    秀逸な舞台であったようには思うのですが、既存の戯曲に縛られることなく、作り手の創意に裏打ちされた作品を観たい気持ちの方が強く残りました。

    3.シライケイタ 『山の声ーある登山者の追想ー』

    骨組がとてもしっかりと作られた作品で、記録を読み上げるような外枠の説明にもあざとさがなく、観る側としてすっと世界に入っていける。
    シーンごとの緩急も強かに作られていて、その語り口にも、解けていく物語の時間軸に観る側を戸惑わせない端正さを感じる。
    中盤までは、観る側をしっかりと委ねさせる密度や緩急があって、その厚みにぐっと取り込まれる。
    また、描かれるものの視座を最後まで隠し通す力量も役者たちにはあって。

    ただ、惜しむらくは、後半の猛吹雪のシーンの映像というか効果が生む舞台上の質感がそれまでの語り口の密度とやや乖離しており、その部分だけが舞台の流れと異なったトーンに感じられる。
    そこまでのシーンは、終わって初めてわかることとはいえ、素舞台に近い中で役者たちが、光と音を纏いつつしっかりと主人公の視座から見えるものを立体的に紡ぎ出していたのですが、さらに加わるイメージが役者たちの描くもの
    をもっと広く浅く薄めてしまったようにも思われて。
    それでも、主人公の今を語るラストシーンには、そこまで積み上げてきたものから生まれる物語の新たな視野に捉えられたのですが、もし今回のような段取りで物語を描くのであれば、シーンの重さの作り方などにも更なる工夫の余地があるように感じました。

    4.澤野正樹 『FESTIVAL/ONOBORI ートーホクをヌぐー』

    男優のみの舞台。入場時からの劇場全体の雰囲気づくりもしっかりとできていて、観る側をうまく彼らの世界に導いていたように思います。
    ネタなどは鉄割アルバトロスケットなどのやり方を思い出すものもあったのですが、そこから表現しようとするものには、作り手としてのフォーカスを感じることができる。

    下世話であっても、基本的にハレのノリがそこにはあって、
    観客をしっかりと楽しませつつ、その奥にキャラクターたちの心情を
    描き出していたように思います。

    但し、舞台として観たときに、しっかりと作りこまれている部分と、細かい雑さが混在しているのが少々気になる。
    ダンスなどにしても、もしもその雑さで恣意的に勢いやウマ下手を表現しようとしているのであれば、必ずしも機能していない気がするし、逆にところどころに観られるしっかりと圧力をもった表現がふらつかなければ、もっと多くのニュアンスを作品に作りこめる感じがする。

    単にベタというのとは少し異なる奥行きも垣間見え、作り手が今後どのような歩みをするのかを気にさせる力は十分にありました。





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    2014/03/09 09:35

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