「高校演劇」がブームになる日
高校演劇部・男子部員がアイドル化することなど、思いもよらない現象だろう。
たしかに巷に拡がる「演劇部」のイメージとは距離がある。
私は目黒パーシモンホールを運営する目黒芸術協会主催の「高校生演劇ワークショップ」発表会を例年、見学している。
このイベントは主に目黒区内に通う高校生を対象とし、稽古期間も3日に満たない即席だ。
トークショーによれば、男子参加者に限ると ほぼ「演劇部」らしい。
そこで、彼らの舞台を観て、親御さん達は「子どもたちの能力を生かしていない」とアンケート用紙に記すのだが、大変、不評なイベントである。
観客の30代女性は話す。
「男の子は真面目なタイプね…学校ではモテなさそう」
友人の30代女性も「あなたも言うわね」(笑)と一言、リアクションした。
これが世間の「演劇部・男子高校生」に対するイメージである。
ただ、こうした古い像へ一石を投じる演劇部も出現。
私が1月お正月明けに開催された「TOKYO ドラマフェスタ」(東京都私立中学高等学校演劇発表会」を観劇したところ、女子学生の「黄色い歓声」が響いていた。
それは最終演目、 獨協中学高等学校演劇部 吉川潤(高校1年生)作「ヘプタメロン - 七日物語」の作中であった。
「まるでアイドルのコンサート」(40代女性)
主演を務めたイケメン部員・◯に、女性高校生の熱い視線が注がれる。
あどけない中学一年生部員が台詞をいえば「かわいい〜」、高校生部員がズボンを脱ぐ際は「えぇー!」と歓喜した。
終演後、ただひとり手を振るイケメン部員・◯は「アイドル」だった。つまり、「高校演劇のアイドル化」である。
獨協演劇部は2011年公開映画『行け!男子高校演劇部』のモデルらしい。
私は大手事務所・テアトルカンパニー所属の子役が出る舞台だけが「プロ」ではないと思う。
もっとも、テアトル子役は礼儀正しく、今時の小学生にしては驚くほど大人と対話できる。
しかし、「高校演劇」には脚本、演出を生徒が担当する例もあり、何というか「主体共同性」が備わっている。
それが、まるでレアチーズのような「透きとおった青春」を、観客に味わせる秘訣だ。「感受性のプロ」だろう。
「高校演劇」という単語を聴くと、「教育委員会」の規制を感じ、つまらない、堅い、子供騙しのファンタジーだから観劇しない方もいると思う。
そういう疑念を払拭するプレ観劇が、「高校演劇部を舞台にした青春群像劇」を謳う『ラズベリーボーイ』なのだ。
※続く