満足度★★★★★
3度目の観劇
Bチームが演じる大千秋楽をセンター最前列で観劇する幸運に預かった。
張り出しの舞台でその横にも客席が配置されてるので厳密にはもっと前にも客がいるのだが、舞台を真正面から観劇するにはここが最前列なのだ。
そして、今回最も印象に残った演技を真横から見ることができる位置でもある。
物語の終盤、会場の99%が見ていない演技がある。
ホンドが殺されるシーンを舞台の隅で、もう殆ど舞台外と言っていいほどの隅からじっと見つめるコウ。
客席後方からは階段状の客席に阻まれて物理的に見えないし、張り出した舞台横の客席では超至近距離の目の前で斬られるホンドに目が釘付けになる。
大千秋楽のあの時間、客席をぐるりと見渡してみたが、舞台隅でジッと悲しみに耐えるコウを見つめるのは僕と舞台上のホンドだけだった。
ただ不思議なのは、コウの演技が思ったより静かなのだ。
愛しい人が激しく斬られるのを目の当たりにして、泣き叫ぶのではなく、目を反らすのでもなく、座り込んで拳を固めて、涙を湛えた目で唇を噛んでジッと耐えるコウ。
目の前であんなに何度も激しく斬られているのに正直意外だった。
ただそんな素人にも分かりやすい演技ではなく、内面に秘めた意思の強さ、狐族の未来の為に何があっても絶対に揺るがない決意の固さを、敢えて動かないことで表現したのではないだろうかと想像している。
この想像が合っているのか、いつか機会があれば尋ねてみたい。
ラストシーンの花嫁行列では筆舌に尽くしがたい美しさと儚さを全身で体現してみせたヒロイン役の柴 小聖(しば このな)さん。
狐族全体が一族の命運をかけて助けたかった。
ホンドが己の命を投げ打っても守りたかった。
・・・しかしできなかった。
そんな想いに自然と共感し、あまりにも悲しい結末に客席全体を涙の渦に巻き込んでしまう素晴らしい表現力。
そんな大女優の細い背中を1mの至近距離から見つめる舞台だった。
また次の作品も楽しみだ。