失望のむこうがわ 公演情報 アル☆カンパニー「失望のむこうがわ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    看板に偽りなし
    三浦さんが、チラシに書いている「これは、エンターティメントな会話劇です」という科白に嘘はありませんでした。

    いやあ、本当に凄い!先日の浅田真央さんのフリーの演技ぐらい、凄かった!

    「熱海殺人事件」から、何十年も、平田さんのファンですが、今回、改めて、素敵な俳優さんだなあと、再確認致しました。

    平田夫妻の快挙に乾杯!客演の平原さんも、迫真の名演技でした。

    二人が会話するリビングに、映し出されるテレビの映像が、これまた刺激的な小道具になっていて、おつな演出。ただ、今日は、スタッフの誤操作があり、DVD映像だと露呈してしまう瞬間があったのは、残念でした。

    ずっと、三浦作品を拝見したかったのですが、おばさんには刺激的な場面が多いと聞き、これまで敬遠していたので、今回拝見することができて、嬉しく思いました。

    ネタバレBOX

    幾ら三浦作品でも、まさか平田ご夫妻が、人前で、裸体にはならないだろうと、安心して観に行きました。

    案の定、裸体にはならなかったけれど、心は裸にされる作品でした。(笑い)

    いやあ、本当にエキサイティングな会話劇でした。

    愚かしくも、愛しむべき、人間の本性が、静かに、的確に炙り出される、洒落たドラマでした。

    奥さんに浮気をされたご主人が、しきりに情事の回数を気にしたり、妻と昔行った摩周湖の霧が晴れた瞬間を、二人の思い出の宝物にインプットしていたり、自分や、周囲の人間に、似たようなエピソードをたくさん知っているだけに、何度も、笑ってしまいました。かなりこだわりの強いご主人のようで、そんなところに、妻は日常の不満が蓄積してしまったのかなと想像したりします。

    実は、私の知人に、妻が浮気したにも関わらず、平穏に、夫婦関係が継続しているカップルが、かなり存在するのです。
    他人の家の事情はわからないので、今まで、どうやって、ご主人が折れたのか、不思議に感じていましたが、この芝居を観て、そうだったか!と謎が解明された気分です。

    浮気相手が家に呼び出されてからの終盤の舞台は、息を呑んで見入ってしまいました。スポーツ競技の実況中継を固唾を呑んで、見守ったのと類似した心境でした。
    浮気相手の心情吐露の台詞には、誰でも胸を抉られる真実が潜んでいたのではないでしょうか?

    日曜日のテレビ番組が、苦悩する夫の後ろで、小さな音や無音声でずっと流れています。
    「アッコにおまかせ!」に始まり、「笑点」、福澤さんの「番記者」、「ちびまるこちゃん」、ニュース番組、ダウンタウンや、お笑い芸人出演のバラエティー、テレビ通販の深夜番組まで。

    佐村河内や、新垣のインタビュー、真央ちゃんのスケートシーンなど、最近の話題の主が、無言で客演し、迫真の夫婦の会話劇に色を添えます。もしかすると、あの映像選択にも、深読みできる要素が隠されているのかもしれません。

    ここにまた、小憎らしいほどの演出の意図が見えたような気がしました。

    それに、終盤、夫婦が、「あの土下座は、例のテレビ番組の影響だよね」と言って、浮気相手の土下座をネタに笑い合うシーンがありました。
    この夫婦は、普段いつも一緒にテレビを観ているらしいことは、それ以前の台詞からも類推できるのですが、この土下座ネタで笑い合うシーンが挿入されることで、今後もこの夫婦が一緒にテレビを観る関係に戻れそうな気配を観客は感じ取れる仕掛けです。

    関係の拗れた夫婦は、一緒にテレビなんて観ないと思うので、これは一種のハッピーエンドなんですね。そういう、日常的な人間描写が実に巧みでした。

    少し、写実性がないかなと感じたのは、浮気相手のガソリンスタンド店員の人物造形ぐらいで、概ね、非常にリアルな人間模様が描かれた作品だったと思います。

    終演後、客出しの音楽は、「三年目の浮気」タイプのオリジナルデュエットソングでした。最後の最後まで、小粋な演出が施されていて、ニンマリ!

    2月にして、私の今年のベスト5に入りそうな予感のする、非常に、素敵なお芝居でした。

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    2014/02/22 23:01

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