星ガール 公演情報 多少婦人「星ガール」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    SFものとしては良い出来、成長を感じた
    多少婦人は等身大の日常生活の人間観察をもとにした作品が特徴であるが、作・演出の酒井さんは学生時代は近未来の

    不条理劇風作品をやっていたので、彼はこのジャンルは好きなのかもしれない。今回、ひさしぶりに昔の酒井さんに再会できたような懐かしい気持ちで観た。

    テーマがはっきりしていて、会話も多少婦人らしい面白さが出ていて、私が観た多少婦人発足以来の酒井さんの作品の中では一番よくできていたと思う。

    というのも、オムニバスが多い多少婦人のスタイルは酒井さんが学生時代に作っていたものとは少し違うので、普通のコメディ作品を多少婦人のテイストで書こうとしたときにうまく収まりがつかないところがある。そこをどう克服するかという点を今回興味深く注視したのだが、なんとかクリアできたと思う。

    人間社会は個性や欲望がぶつかりあい、軋轢を生む。それが長期間の密室空間ではなおさら助長されるのでスムーズに航行がなされるよう、欲望抑制の薬を使ってみたらどうなるか。

    欲望はエゴという悪も生むが、互助や調和も生む。「極限まで抑制すると呼吸さえできなくなる」ということを見せ、「欲望の効果」にも思いをはせられる作品だ。

    なまじ困難が現れてみんなで一致団結する方向にまとめなかったのは良いと思った。
    難が残ったのは前半。多少婦人風のだらだら会話が続くので、途中で疲れてしまう。

    体感時間が長く感じられ、あと10分程縮めてメリハリをつけたほうがよかったと思う。

    今回は舞台美術も凝っていたし、キャストも以前とは替わり、なかなか面白い個性の持ち主が揃っていた。


    ネタバレBOX

    酒井さんは人間観察が好きなんだなぁと思う。

    女性特有の見栄や皮肉の応酬など、男性の冷静な目でリアルに描いている。

    ジャーナリスト役の山本しずかが「真実を追求する」と言いながら「面白く見せればいいのよ!」という本音を叫ぶ場面、以前「朝まで生テレビ」放送中に

    「もっとまじめに討論したほうがいい」と言う大学生のスタジオ見学者に向かって田原総一朗がぶつけた仰天発言とそっくりで妙に感心した。

    山本の演じる谷は劇中で目立つ服装を指摘されるが、ジャーナリストと言いながらバブル期のTVリポーターのようでもあり、リアルだ。

    (当時の女性TVリポーターは本番直前まで自分がどう映るか服装とメークばかり気にしていた)。

    谷は真実など真面目に考えていない人なのだろう(苦笑)。

    油井役の大浦孝明、鬼塚役の田坂智史、男性陣のキャラクターが生きていて面白かった。

    それに比べて村上俊哉の金井役はしどころが少なかったように思う。

    みかんの副館長も彼女のすっとんきょうでトボケた個性が今回は生かされない役どころで少し物足りなかった。

    酒井の演じる事務官の食べ物に対する執着ぶりが可笑しい。

    この人の真面目にやって可笑しい演技が私は好きで、他劇団の客演でもいつも観客からの評価が高いようだ。



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    2014/02/18 15:40

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