サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春 公演情報 オフィスコットーネ「サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    正攻法
    正攻法の芝居だと思った。

    ネタバレBOX

    脚本は、永山則夫の人生をうまくひとつのフィクションにまとめていて、技巧的にはうまいと思った。

    アパートの一室にいる永山のもとに、「今日ここで(左翼的な)会合がある」という手紙をもらったという男が4人次々と現れる。
    また、アパートには、母や姉も登場する。
    若い永山少年も登場する。
    そこで、永山の人生を振り返りつつ、対話がなされていく。

    「永山の最後は刑務所じゃないのか?」と不思議に思いながら見進めるが、
    最後に、これは刑務所の一室での彼の幻想なのだと気づく。
    何度となく刑務所の中で振り返り、考え、想いを巡らせた様々なできごと、
    その最後の幻覚。
    4人の男とは、永山が殺した男だったのだ。
    「この4人以外に誰が私を殺せる(裁ける)のか」と永山は言い、
    死刑を待つ。

    現実に起こった事件と永山の人生を、一夜のドラマに構成する手腕はとてもうまいと思うが、その作品の問いかける意味は、永山則夫について言われてきた言説の最も一般的なことを形にしたに過ぎない。
    貧乏で、不遇で、親の愛情にも恵まれず、差別され、、、その不遇が、一人の純朴な少年を殺人鬼に変えてしまった、と。
    それ以上の複雑は何もない。

    そのため、観ていて、驚きも発見もなく芝居が終わった。

    今日の社会で永山則夫のことを考える場合、
    アキハバラ事件や先日起こったアクリフーズ群馬工場の農薬混入事件など、、、が頭をよぎるはずなのだが、
    芝居を観ながらも、ここで起こっていることが、今日の格差や貧困とそこから生まれてしまう犯罪と、少しも重なっては見えなかった。
    おそらく、複雑さを孕まない単純化された物語のため、そう思ってしまったように感じる。
    (いくら不遇でも犯罪を犯さない人だっているという程度の分裂さえも、この作品には書き込まれていない。)

    演出や演技に関しても、極めて正攻法。
    特異な演出ならば完成度などは少しも気にならない私も、
    正攻法の作品の場合、どうしてもその精度(完成度)を求めてしまう。
    充分熱量のある芝居ではあったが、それ以上のものとは思わなかった。

    この作品の真面目な姿勢と比べたら、
    いい加減な姿勢の作品にも✩4や✩5などを私は付けていることもあるので、✩3というのは厳しいと自分でも思う。
    ただ、正攻法のものは、観る側のハードルもどうしても上がってしまう。悪しからず。
    文字通り、「評価」ではなく「満足度」だとお考えください。

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    2014/02/11 14:24

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