幸福な職場(再々演) 公演情報 劇団 東京フェスティバル「幸福な職場(再々演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「ありがとう」と、思わず言いたくなるような作品
    東京フェスティバルは社会派の劇団だと思う。
    それは、現在の社会に対して厳しく問い詰めるということではなく、もっと身近に自分たちと、現在の社会について考えてみようというスタンスである。
    今回も、障害者雇用という視点から、「働くこと」について考えさせられる。

    笑って、ボロ泣きしながら観た。

    ネタバレBOX

    「一生暮らしていけるだけのお金があっても働きますか?」
    という問い掛けに対して、学生のときだったら、「いえ、働きません」と答えたと思う。
    しかし、いったん社会人として働きはじめてからはそういう考えはなくなった。

    たとえお金があったとしても働きたいと思う。
    今で言う(人事労務的に)ブラックな企業に勤めていたこともあったが、それでも働きたいと思う。
    それはなぜか。

    「楽しいから」だ。

    また、「これからの企業にとって大切なものは何か」という問い掛けに対しては、
    「人」です。
    と即答できる。

    「人」とは、企業を取り巻く人々(いわゆるステークホルダーのこと)のことを指すのだが、まずは「自社の社員」だ。「社員を大切にする会社」「社員を幸福にする会社」は「いい会社」なのだ。
    『日本でいちばん大切にしたい会社』を読んで強くそう思った。
    「人」を大切にする会社は、人からも大切にされる。

    で、この作品は、『日本でいちばん大切にしたい会社』でも紹介されている、障害者をいち早く採用し、今も社員の多くに障害者を雇用している日本理化学工業がモデルとなっている。

    作品では、日本理化学工業と同様に、今から50年以上前の昭和34年に、知的障害者を職場体験の形で採用し、のちに正社員として雇用するまでを描いている。
    知的障害への偏見もある時代の中で、会社はなぜ正社員として雇用することにしたのかが、とてもわかりやすい。

    彼らを採用する入口は、「社会的弱者」を「助ける」(同情)ということであったかもしれないが、結果的には働くパートナーとして、現場の人間が率先して受け入れたのだ。
    彼女の働く姿、「楽しそうに働く姿」に心を動かされたのだ。

    「働くこと」への強い意思を感じて、経営者側の心までも動かしていく。
    「働く」ことは、それだけ意味があり、強いものなのだ、と知ることになる。

    もちろん、「働き方」や「給与」の問題は大きい。大きいが、それは知恵を出し合うことで乗り切れるということも示唆している。

    住職が人が幸せに感じる4つのポイントを挙げる(これはモデルとなった日本理化学工業の実話だ)。
    すなわち、「人から愛されること」「必要とされること」「役に立つこと」「ほめられること」である。
    最初の1つは家族から、あとの3つは「働くこと」で得られると言う。
    これは、障害者だけの幸福ではない。
    すべて人にとっての「幸福」の要素だ。

    この作品の入口は「障害者の雇用」なのだが、実は、広く一般的な「働くこと」の「根本的な意味」を感じさせる作品なっていたのだ。
    私たちは、本来「働くこと」で「幸福」を得られるはずなのだ。

    劇中の従業員たちは、障害者を受け入れることで、幸福のひとつ、「(人の)役に立つこと」を感じた。
    『日本でいちばん大切にしたい会社』を紹介してくれた友人によると(彼は日本理化学工業にも視察に行っている)、障害を持つ人と働くことことで、職場の人たちは確実に変わると言う。
    その変化がここにあったのだ。

    幸せを感じるための4つの要素は、会社にもあてはまるのではないだろうか。
    すなわち、「幸福な(いい)会社」とは、「人から愛される会社」「社会(人)から必要とされる会社」「社会(人)に役立つ会社」「社会(人)から選ばれる会社(つまり褒められる会社)」だ。

    その根本に「人」がある。
    つまり、「働くことへの喜び」を感じられる社員が必要で、それは「幸福な職場」であるということ。それがなければ、「いい会社」は成り立たないのだ。

    そうした、とてもシンプルで力強いメッセージが舞台の上にある。

    笑いも随所にありつつも、ボロ泣きしながら観た。
    観劇後、とてもいい気持ちがし、「ありがとう」という言葉が出てくるような作品だった。

    従業員を演じた菊池均也さんと滝寛式さんのコンビ絶妙。
    滝寛式さんが簡単に「よし賛成」と折れないところがいい。

    住職を演じた朝倉伸二さんはやっぱりうまい。いい間で笑わせるし、「幸せ」について語るのがわざとらしく感じないのもさすがだ。

    そして、知的障害のある少女を演じた桑江咲菜さんが、とてもいい。
    相当大変たったと思うのだが、緊張感が一瞬も途切れることなく、好演していた。

    このバージョンは再演だったが、その前の「幸福な職場 2009」はどんな作品だったのだろう。

    終演後、日本理化学工業が作っている、ガラスに書ける「キットパス」を購入した。
    家に帰って、ガラスにいろいろ書いてみた。

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    2014/02/07 17:20

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