真田十勇士 公演情報 日本テレビ「真田十勇士」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    会場の熱が、舞台効果になった感あり
    東京楽日に拝見しました。

    ストーリー運び的には、昨年のTBS版の方が、遥かにクオリティが高いと思うし、作品の重みもありました。

    でも、楽日の、客席と、舞台の熱気が、会場に充満して、高揚感が加味したからか、そういう面においては、なかなか感動的ではありました。

    幕開きのあたりは、テレビの流行語ネタなどが、さして工夫もなく、安易に盛り込まれ、辟易しそうになりましたが、勘九郎さんと松坂さんのコンビも相性が良く、あまり内容に頓着しなければ、各キャストの活躍に興じて、楽しく観劇できる芝居でした。

    何よりも、ナレーションの三津五郎さんのお声がとても力強かったことが、最大の喜びでした。

    カテコで、挨拶に立たれた、幸村役の加藤さんが、「ここで、是非皆さんに紹介したい方がいる」と、この舞台の専属トレーナーの男性を舞台に呼び出し、労ったのは、大変素敵な謝辞の表れになったと、感動しました。

    もう、55年ぐらい、演劇を観ていますが、私の記憶にある限り、こういう陰の協力者が、舞台上で、紹介されたのは、初めて観ました。

    ハードな立ち回りの連続で、キャストの皆さん、彼のバックアップがなければ、到底楽日まで、持ちこたえられなかったと感謝の言葉を述べていらして、こういう、カンパニーの一丸となった温かな空気が、舞台の完成度をアップしたに違いないと感じました。

    ネタバレBOX

     最初に、役名と役者さんの簡単なプロフィールが、紹介されるのは、こういう、雑多な出自の俳優さんの出る舞台では、観客に大変親切だったと思います。ナレーションで、それを紹介する声が、三津五郎さんの術後の初仕事だそうで、お元気な声に安堵しました。

    意外だったのは、平さんの家康は、映像出演のみだったこと。TBSの里見さんの家康が良かったので重厚な演技を、期待していただけに、残念でした。

    由利鎌之助役の加藤和樹さんの立ち回りが、とても鮮やかで、綺麗でした。

    勘九郎さんは、出て来た時から、お父様を彷彿とさせる、物腰、台詞回しで、思わず涙を誘われました。

    松坂さんは、「ヘンリー5世」の演技で、度胆を抜かれた俳優さんですが、今回も、滑舌も良く、演技に自信が漲っていて、観ているだけで、爽快感がありました。

    舞台経験の長い勘九郎さんに、引けを取らない松坂さんの役者資質が、うまく融合し、この二人の絡みが、舞台を弾ませました。

    初舞台の比嘉さんも、物怖じせず、大健闘されていました。

    ただ、十勇士のメンバーのそれぞれの個性が生かされるシーンがほとんどなく、映像による合戦シーンに時間を割き過ぎな点も含め、舞台作品としての完成度は、かなり低いレベルだったのは、とても残念でした。

    アクロバット的な立ち回りに演出の比重が偏り、肝心の人間描写が希薄と言うか、通り一遍な雰囲気を感じました。

    嘘ばかりつく佐助の、そうなった経緯などが、もう少し、丁寧に描かれていれば、人物そのものに深く共感できる芝居になったと思うのですが、「天日坊」のような、主人公の心情描写が卓越した作品に比べ、あまりにも浅薄に感じました。

    幸村が、噂されるような、天下の名将ではなく、たまたま運が良かっただけという設定それ自体は、面白いけれど、でも、歴史ものの実在人物を描く場合は、やはり、荒唐無稽なストーリー作りにおいてでも、一定の許容範囲があると思うのです。

    たとえば、淀が、わざわざ、一人で、夜道を歩いて、幸村に思いの丈を告白に来たり、柳生達を欺くために、佐助や才蔵と結託して、一計を案じ、一芝居打つなんて筋運びには、どう考えても、納得出来かねました。

    そこまで、状況的にありえないことを書かれると、芝居への共感が冷めてしまいそうです。

    良い役者さんが揃っていただけに、考えの足りない脚本と演出のせいで、その力が思う存分発揮されないのは、実に口惜しい気がしました。
    ワイヤーをふんだんに使うのも見せ場としてはいいけれど、サーカスではないのだから、仏作って、魂入れずにならないような、舞台作品としての本質を第一に制作して頂きたいと思いました。

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    2014/02/02 21:02

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