壁あまた、砂男 公演情報 劇団わらく「壁あまた、砂男」の観てきた!クチコミとコメント

  • 考えさせられる
    受付で、「ほこりが立つので」とマスクを渡される。
    その気遣いは嬉しい。が、冒頭スモーク焚き過ぎですから!

    現代、現在の状況と否が応でも重ねて見てしまう。
    盲信は怖い。考えることの放棄。それが招く社会の歪み。
    集団的自衛権とか、秘密保護法案とか、隣国との関係とか、今の、そして今後の日本が、隣国が、砂の国のようにならないことを祈る。

    手袋と靴カバーを使った、砂男支持派・反対派・どちらにも属さない者の表現が、視覚的にも分かり易い。

    役者がフードを被っていない→その場にいる
       フードを被る→その場にはいない
    というのも分かり易い。これで役者が常に袖に下がらず且つ黒子の役割も同時に果たしている。

    考えさせられる脚本の中に、所々笑いも入っている。
    火星に生物がいる確率の話は興味深い。
    役者は好演。
    それぞれが、きちんと役の役割を演じた印象。
    だから誰が一番良かったとか、あまりない。(誉め言葉です)

    ネタバレBOX

    作品中には三国がある。
    亡国である風の国、舞台である砂の国、壁で隔てられた隣国火の国。
    風の国の民は放浪生活を送り、砂の国の民からは「信用ならない」と見られている。
    砂の国は100年ほど戦をしていないが、平和は長く続かないものだ、火の国が壁(戦車で簡単に壊れそうな代物)を破って攻めてくると思い込んでいる。砂の国では「砂男」とその親衛隊が国を掌握している。砂男は作中一度も姿を見せない。
    砂の国の民の思想は、全てその砂男と親衛隊の洗脳?によるもの。平和の10箇条なるもの(私には「平和に甘んじるな、平和は悪だ」と言っているように感じた)を大音量で放送している。そんな砂の国の南部に生きる家族が物語の中心。

    母は砂男の熱烈な信者。父は母の従順なイヌだが、親衛隊には入りたくないと思っている。長女はこの社会に疑念を抱いて反対運動をしている。長男は初めこそ疑念を抱いていたが、合同訓練に参加して以来、親衛隊を善と見なし始める。次女は家族の崩壊を止めたいのみ、反対とも信者ともいえない。

    そこに風の国の民や地域住人、親衛隊(舞台には出てこない)が関わって物語は進む。
    自国を持たないが故、砂の国の思想に捕らわれず、自由に(自分本位に?)、自分の信念に従って生きる風の国の民。
    風の国の民は相手を「人」として捉え、砂の国の民は「風の国の民」として捉える。

    砂男への盲信によって、信者達は良い意味でも悪い意味でもまとまっている。
    しかし不穏分子に対しては行き過ぎた弾圧を行う。
    仲間を助ける為に新兵を殺してしまった姉。疑いから内部分裂をしてしまう反対派。
    自分達でさえ、西側の反対派からの「情報」のみを鵜呑みにしていることに気づく。砂男の信者が彼の言葉を鵜呑みにしているのと同じように。

    結局、次女は砂の国を捨てて、風の国の民と共に旅に出る。ここではないどこかへ。
    「行こう どこかにあるはずだ もっと良い国良い暮らし」と歌いながら。かつて砂の国に現れた「太鼓たたき」がしたように。

    あらすじ長い!ごめんなさいm(_ _)m
    いや本当、これ書きながらも、すごい考えさせられる。

    ラストに舞台が手袋で埋め尽くされ、さらに空中を舞うほどになったのは、砂の国の盲信が加速されて、反対派が居なくなるほどに国全体が熱狂した、ということで良いのかしら?

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    2014/01/31 23:48

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