初春歌舞伎公演「三千両初春駒曳(さんぜんりょうはるのこまひき)」 公演情報 国立劇場「初春歌舞伎公演「三千両初春駒曳(さんぜんりょうはるのこまひき)」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    復活通し狂言の意義を感じさせた力作
    国立も正月らしい繭玉が飾られ、華やいだ初春公演。

    国立劇場の文芸研究会による復活通し狂言はいつも楽しみだが本年は午年にちなみ、面白い作品がかかった。

    辰岡万作という狂言作者も私は「馬切」以外知らなかった。

    現代の新作歌舞伎ではなく、こういう作品を掘り起こし脚本を研究するのは、一から新作を作るのと同じ労力がいるが国立劇場だからこそできる大事な仕事。
    橋下大阪市長などは、そういう点を理解していないのが歯がゆい。

    尾上菊五郎を座頭に、中村時蔵が立女形、若女形と二枚目を兼ねる菊之助、二役の尾上松緑、坂東彦三郎はじめ山崎屋や橘屋など羽左衛門のところの三兄弟と息子たちがそろう。

    伸び盛りの尾上松也の若衆ぶりもみずみずしい。

    今回は五幕物にまとめてあるが、原作は8幕もあり、お家騒動も今回は二派対立だが、原作は三派対立だという。

    江戸時代の芝居の筋は本当に複雑だったのだなぁと感心する。

    現代では江戸時代の通し狂言を原作に近い形で堪能するのはまず不可能である。

    そう思うと、少しさびしい。

    本作は文楽でも上演できる作品ではないかと思う。

    せっかくの暗転からの幕開きに隣の中高年男性がぎりぎりに着座してメールチェックをやめず、明かりが気になっていらいらした。

    おまけに幕切れの手ぬぐい撒きでは、私の靴の上に落ちた手ぬぐいを体当たりでぶんどる。

    こういう無粋で行儀の悪い自分勝手な客が近頃増えてきてうんざりする。



    ネタバレBOX

    幕開きがまるで天竺徳兵衛や国姓爺合戦みたいに異国高麗の浜辺。

    菊之助は、高麗の照菊皇女と立ち役の大工与四郎を替わるが、照菊が、やつしのやとな、使者の菊の前や傾城に化けるので女形だけでも4変化。菊五郎一座のこの正月公演が毎年いろいろ冒険できるのも、菊之助の存在が大きい。

    菊五郎の信孝は松平長七郎の見立てだが、鷹揚な若殿ぶりがこの人らしい。

    馬切の立ち回りは菊五郎劇団らしく楽しませる。

    松緑は実悪の勝重と双子の弟で実直な田郎助と正反対の二役を替わる。

    時代物の台詞がこの人の課題だが、時蔵を女房役にしてもつり合いがとれる役者になってきた。

    新作(かきもの)にせよ、古典にせよ、世話物のほうが似合う気がする。

    時蔵は武家の女房の性根を見せる浅葱の石持の衣装になってからがいい。

    亀三郎が敵役を手堅く演じられるようになり成長した。

    釣り天井の仕掛けや、二階を使った二人腹切りなど趣向を凝らした舞台装置で楽しませる。

    しばらく見なかった市村竹松は学業に専念したそうで昨年大学卒業して舞台復帰したとか。この年頃だったころの父親の萬次郎そっくりで驚いた。

    萬次郎は町内の女房おしげで昔の菊次郎のような役どころをやるようになった。

    権十郎が今年還暦で、私と誕生日が近く、お互い20になったばかりのときに話したあれからもう40年がたったのかと感慨深い。

    本当は萬次郎が大学に行きたかったが、羽左衛門の意をくんで断念したと権十郎から聞いたが、竹松君はお父さんの果たせなかった大学生活を送れたのだなぁと思ったりして、役者と一緒に年を取るのも歌舞伎の楽しさかもしれない。




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    2014/01/30 15:33

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  • KAE様

    コメントいただきありがとうございました。私は国立劇場の文芸研究会のお仕事にはいつも敬服し、楽しみに通っています。

    復活の通し狂言は原作を検討し、一から脚本を作り直すので新作を一本造るよりむしろ大変な作業、しかし、松竹のような興行会社にはできない歌舞伎の両輪だと思います。

    大木豊先生がきっと喜んでおられるでしょうね。

    一観客として国立劇場のお芝居を陰ながら応援していきたいです。

    2014/02/06 17:00

    きゃる様

    私は観に行けませんでしたので、ご感想、嬉しく拝読致しました。

    歌舞伎好きな父の血は、私は半分しか継いでいませんが、国立にいる甥には、その血が十分伝わったようで、彼は、復活上演の企画に尽力し、先日も功労賞か何かを頂いたようです。

    きゃるさんのご感想、今度従弟に会ったら、伝えます。きっと、喜ぶことでしょう。

    2014/01/31 20:05

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