夢も希望もなく。 公演情報 月刊「根本宗子」「夢も希望もなく。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鼓動をとめることなく繫がれる二つの時間
    役者達が緻密に紡ぎだした刹那が、
    ステレオタイプになることなく、
    さまざまな結び方で繋がり
    切り取られた二つの時間に、
    日々の歩みが醸されて
    その日々の重さとして降りてきました。

    作り手の作劇の才が、
    これまでの作品を経て、さらに開花したように感じました。

    ネタバレBOX

    劇場に入ると、舞台には同じ作りの二つの部屋が並んでいて・・・。
    そして中央に大きな溝のようなものがあって。
    よく見るとテレビやビデオデッキなども下手側は時代がかっていて
    上手側は今様で・・・。

    開演すると、それぞれの空間に異なる肌触りの物語が紡がれていきます。
    下手側には、どこか初々しいカップルの、
    上手側には、日々の生活を感じさせるちょっと懈怠を感じる男女の
    朝の光景が置かれて・・・。

    そこから、ルーズに互い違いに物語が歩んでいく。
    上手と下手のキャラクターのつながりは
    当日パンフレットからもわかるし、
    舞台を暫く観ていてもすぐに理解できる。
    でも、この作品にとってそれはスタート地点で、
    そこから二つの空間の時間の流れと繋がりが
    実に強かに描き出されていきます。

    対になる役者達がキャラクターの雰囲気を
    寄り添わせていくのですが、
    それが単に容姿とかだけではなく、
    むしろ言動のトレンドや性格などの現れ方でより結ばれていて。
    エピソードの顛末に重ねていくやり方も強かで
    下手から上手へと貫かれるクリスマスケーキやフライドチキンのエピソードや
    下手ではバイト先の友人の得意料理のカレーがそのまま商売になったり、
    下手でプロポーズをした劇団の主宰が
    上手ではテレビドラマの準主役になっている。
    そうして隔てて歩む二つの時間が
    単純な出来事や表現の結びだけではなく、
    編みあがる物語のつながりのなかで
    次第に経年変化をした10年間がにび色の鼓動とともに
    観る側を包み込んでいくのです。
    やがて舞台にはエピソードのリンクに留まらない、
    登場人物たちの日々の質量が生まれていて、
    よしんば、下手の歌が上手に踏み出だすことが、
    その日々の俯瞰に至り、
    ラストシーンでキャラクターが
    時間の枠を踏み出して過去の自分を抱きしめる姿にも違和感がなく
    とてもいとおしく思える。

    また、どちらかの側の時間が紡がれる間、
    他方の時間が止まっていないのも
    上手いなぁと思う。
    二つの時間の鼓動が常に重なっていることで、
    キャラクターたちの過去と今に重ね合わせの静的な概念ではない
    感覚的に伝わってくる因果があって。
    それは、舞台にこれまでに体験したことのなかった
    時間の立体感を溢れさせていて。
    そのことが隣の住人の10年も上手の浮気の相手にも
    単に物語に置かれた出来事ではない、
    エピソードへの交差感を作りだしていくし、
    二つの時間を跨ぐキャラクターたちの
    対比に留まらないキャラクターたちの足跡が
    浮かび上がってくる。

    観終わって、キャラクターたちの歩んだ時間への感慨に浸りつつ
    その先にある見えない未来に
    さらに足跡が刻まれていくことにも思い当たって。
    上手側から照らされた下手側に刻まれた時間の必然を受け取りつつ
    下手側から編みあがった上手側の今の肌触りに深く心捉われたことでした。

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    2014/01/27 07:15

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