劇読み!Vol.5   ご来場ありがとうございました。 公演情報 劇団劇作家「劇読み!Vol.5 ご来場ありがとうございました。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    五臓六腑はやはり面白い
    以前、劇作家協会の月1リーディングで、大変気に入った作品、校倉元さん作「五臓六腑色懺悔」を観てまいりました。

    あの時は、それほど演出があったわけではありませんでしたが、それでも十分面白かった作品だけに、今回の上演は、更に進化して、動きがない舞台にも関わらず、耳で聞く情景が目に浮かぶようで、大変刺激的な舞台でした。

    皆さん、台本を持っての朗読形式の演技ながら、台本をめくった紙面に役名と役の説明が書いてあって、台詞を言う人間が誰なのかが一目瞭然で、観客に親切な演出でした。

    役者さんも、皆さん、好配役でした。

    黙阿弥の歌舞伎を連想するような、流麗に流れる台詞は聞いていて心地よく、もう少し、台詞の多さを整理した上で、新作歌舞伎脚本賞に応募されたら良いのではと思える佳作でした。

    トコヨミ役の清水さん、粋な色気が素敵でした。蛤役のささいけい子さんは、本を片手にしながら、踊る仕草が堂に入っていました。ただ、最後の大事なシーンでの何度かあった台詞の言い間違いはちょっと残念でした。

    校倉さんの学校時代のお友達が、終わった途端、「凄い!良かったじゃない!」と歓声を上げていたのが印象的でした。

    ネタバレBOX

    一人の人間の五臓六腑が、天狗組と河童組に分裂し、敵味方に分かれていがみ合うという、一見突飛な設定が、実は、大変哲学的で、いろいろな社会の矛盾を示唆していて、作者のアイデアに唸ります。

    ト書きを読む三原さんの台詞回しが、江戸時代の芝居小屋を連想させ、その語りの巧みさのお蔭で、頭の中にたくさんの情景が広がりました。今作品の登場人物だけでなく、その背景に、沖縄や福島や足尾銅山や、世界のあちこちの紛争地域の情景が重なりました。

    武力で、相手を制するのではなく、説得で、争う二組の仲裁に入る蛤の姿に、日本もそうあるべきなのにと思ったりします。蛤は、自分勝手な振る舞いで、息子を捨てて、色恋に迷った過去もあるけれど、今は、息子を探して、何とか彼の再生を助けようと尽力します。わが国も、過去の過ちを悔い、その経験を糧にして、他国の仲裁役として、世界平和に貢献する道はないのでしょうか?

    荒唐無稽な歌舞伎仕立ての狂言芝居の態でありながら、今の世界情勢にいろいろ思いを馳せたくなる、深く味わいのある作品でした。

    台詞の随所に、各臓器の機能などをうまく語るセンスも洒落ていました。

    ただ、笑えはしたのですが、昔風な良い味わいだっただけに「コラーゲン」とか、現代を思わせる台詞は不要だったようにも感じました。

    天狗の台詞で「さっき」という箇所も、「先ほど」か、「先刻」にした方が、しっくり来るように思います。

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    2014/01/27 02:32

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