夢も希望もなく。 公演情報 月刊「根本宗子」「夢も希望もなく。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    あの繊細さを最後まで持続できれば
    本作品では、登場人物の過去と未来が時系列に描かれるのではなく、舞台の下手上手に設置された同じ間取りの部屋で、同時並行で描かれます。つまり、同じ人物の過去と未来を、それぞれ二人の役者が、時にはシンクロしながら同時に演じるという、独特の手法がとられています。下手(10年前)での行動が、上手(10年後)にいかに作用するかや、登場人物の10年間の変化(もしくは変わらなさ)を同時に見つめるその手法は、ある時は未来の暗示のようでもあり、ある時は回想シーンのようにも見えます。「テレビや映画じゃ観られないものを作りたくて演劇をやっている」という、パンフレットの根本宗子の言葉通り、まさに演劇以外では成し得ない表現方法といえるでしょう。

    舞台が二つに分かれている以上、観客の意識は常にそのうちどちらか一方に向けられていることになりますが、スポットが当たっていない方の舞台でも芝居は続行されます。その、台詞の無い「間」の部分に至るまで行き届いた細かい描写は、複数回観劇することでさらに気付くこともあり、作品の奥行きを増していました。何気ない台詞や所作の一つ一つまで繊細で丁寧なのもまた、根本宗子作品の魅力の一つでしょう。だからこそ、最終場面の、「今、私は~と感じています!」と、まくし立てるように半ば強引に纏めてしまう締め方は本当に勿体ない。あの繊細さを最後の最後まで持続できるか。そこだけは今後に残された課題なのではないかと思います。

    次回作は是非、もっと大きな劇場で、もっと多くの人の目に触れて欲しい。これからも根本宗子作品は一作品たりとも見逃したくありません。

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    2014/01/20 22:09

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