人魚の夜 公演情報 青☆組「人魚の夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    見えてこない部分が心地よくもスリリング
    「青☆組」の舞台は、すべてが説明されないのがいいです。
    まるで良質の心理小説でも読んでいるかのように、不思議を
    感じつつも心のどこかで納得させられてしまう力があります。
    今回、舞台美術が素敵すぎてグッときました。

    ネタバレBOX

    障子をモチーフにした舞台美術に囲まれて、伝統的な日本
    家屋がセットされているのを見て、その美しさにドキドキしました。
    日本の家って、こんなに趣深いものなのだなと、初めて知ったような
    気がしました。

    これは「昔々の未来のお話」。一年を通して雨が降り続ける、人魚の
    伝承を持った村の物語です。

    この村、一時、女性が生まれなくて、男性たちは代わりに海の人魚を
    嫁にもらった、初め、人魚たちは陸の生活に慣れなくて、雨の日にだけ
    地上に上がってきた。雨を望む人魚たちの声に応えるように、この村は
    雨ばかり降るようになった、と説明されていたけど、

    過去に、戦争が何かがあって、そこで放射能兵器かそれに近いものが
    使用され、文明は一気に退行すると同時に、異常気象が起こった(現に、
    東の方にある町は逆に雨も降らないようなところらしい)、と考えたほうが
    いいのでしょうね。そう解釈すれば、「女子が生まれない」という理由も
    何となく見えてきます。

    すべてがこんな感じで、この物語、筋だけ追えば、2年前に台風の海に
    消えた女性の靴が見つかり、その女性の実家で葬儀がつつがなく
    行われ、そして以前と同じ感じの日常が戻っていく…という話なのですが
    一家の主である父親の少年時代・現役の教師時代の回想がそこに
    境目なく混ざり合うことで、どこか不思議なニュアンスを覚えさせることに
    成功していますね。

    一家の長女が嵐の海に消えた本当の理由は? 過去に、父親と同じく
    教師をしていた長男は、ある嵐の日に家まで送り届けた教え子の子と
    本当に何かあったのか? 妻を亡くし、義理の父親の住まいで今なお
    同居する男に密やかな恋心を抱く次女(ちなみに既婚者)。

    すべてはあっさりしていると言われかねないほどに、物語の中で
    さらっと描かれているので、気を付けて観ていないとそのまま
    流してしまいそうなことばかりです。しかし、そのちょっとした描写、
    役者の動作がそのまま、人物たちの計り知れない、計算立て不能な
    「人間」を表しているように、私には思えました。

    吉田小夏氏の作品は、舞台の上ですらあまり見なくなった生々しさ
    (それは女性の艶やかさなどほんのりとした性的な部分も含みますが)の
    部分にこだわっているようで、すごく人間的な気がします。朝食のシーン、
    湯気立つ様も込みで堪能させて頂きました。生前の妻のつくる食事に対し、
    「うん、おいしい、おいしい」を何も考えないように連呼する男の姿に、
    あぁ、男性だよなぁ、とつくづく感じました(笑

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    2014/01/19 09:52

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