新年工場見学会2014 公演情報 五反田団「新年工場見学会2014」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    頑張り所のチョイスが適切
     前田司郎率いる五反田団と岩井秀人率いるハイバイ。2団体が中心となり毎年始に行っているというエンターテインメントショーを初観覧。
     当日パンフによれば、この見世物は前田氏いわく「毎年、年始に悪ふざけをすることで、初心を忘れないように気をつける催し」だそうで、岩井氏いわく「毎年「そこまで本気じゃない感じでやる」主旨でやっている」そう。
     両氏の言葉に嘘はなく、五反田団が演った『クリィミー☆チカ』もハイバイの演った『大衆演劇のニセモノ』もその名に恥じない
    “悪ふざけ演劇”だったが、だからと言ってテキトーづくしというわけでもなく、二団体ともある部分にはとても力を入れていて、その“頑張り所”のチョイスが適切だったせいなのか、両作とも大いに楽しめた。

    ネタバレBOX

     五反田団『クリィミー☆チカ』は、元カレに借金を踏み倒されて金に困った女が主人公。
     女は偶然出会った宇宙人に授けられた魔法を使って美女に化け、変身前の容姿では働けなかったキャバクラで人気嬢となって大金を稼ぎ、店に来た芸能関係者にスカウトされてアイドルにまで登りつめる。
     センスのいい中学生が授業に退屈してノートに走り書きしたようなストーリー自体も楽しめたが、最も魅了されたのは、アイドルになった女が全キャストをバックダンサーとして従えつつ歌い踊るラストシーン。
     バックダンスの振り付けが丁寧かつきめ細やかになされているせいで、女が歌う某魔女っ子アニメの超テキトーな替え歌との間にいい感じのギャップが生まれ、この上ない可笑しみを感じたし、中央で歌う女がバックダンスに支えられてすこぶる魅力的に見えた。
     華麗に踊るバックダンサー陣が終始“シラケ顔”を貫いていたこともギャップの可笑しみを生んで、笑ったのなんの。
     稽古中、テキトーでも許されそうなこのバックダンスの練習に最も時間が割かれたことは想像に難くないが、その甲斐あってとても楽しい娯楽作に仕上がっていた。
     ハイバイ『大衆演劇のニセモノ』は、岩井氏が「一回見てみたらスンゲー面白かったので、その記憶だけでやってみ」たという、大衆演劇の紛い物。大衆演劇をまともに観たことのないバルブが観ても面白かったので、大衆演劇通の人にはより楽しめたにちがいない。
     五反田団がバックダンスに力を入れていたのに対し、ハイバイが本作で力を注いでいたのは“大衆演劇ならではの約束事”。殺陣のシーンなどは流し気味なのに、“役者は登場時と見せ場を演じた直後に名を呼ばれ見得を切る”“花形役者は力み返った口調で喋る”などの大衆演劇の決まり事は過剰なくらいにきっちりとやってのけ、それが得も言われぬ可笑しみを生んでいた。大衆演劇に不慣れな感じを出すため、名を呼ばれた後しばしあたふたしてから見得を切るのも可笑しかった。
     こうしたことに飽きてくる中盤以降は話自体が面白味を増していき、結果、最後まで飽かず鑑賞。キリシタン狩りで家族や仲間を失った男の復讐譚というよくある話ではあったが、繰り返し演じられてきたせいで話が精錬されており、グイグイ釣り込まれてしまった。
     ベスト俳優は五反田団の作品でアイドルを演じた内田慈(うちだ・ちか)さん。美人でハキハキしている上、休憩時間中、観客にホットワインを配っている時の対応も良く、好感を持ちました。

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    2014/01/08 06:30

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