性病はなによりの証拠 公演情報 ブラジル「性病はなによりの証拠」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    クリアにがっつりおもしろい
    いやぁ、おもしろかった。

    なんというか、いろんな深さの可笑しさが
    ひとつによく束ねられておりました。

    ネタバレBOX

    まあ、手練れの役者たちなわけですよ。

    それが、自らのロールをがっつりと背負って、
    漂うボートで表向きはそれぞれぞれを慮りながら、
    でも実際には文字通り呉越同舟している。
    その絵面だけでもかなりわくわくものなのですが、
    そこに差し込まれ、あるいは解かれるものの
    ベクトルというか質が実にバリエーションに富んでいて。
    「竹毒」という病名で笑いを取ると、
    そこから解けていくロールたちの個性が見事に描き分けられ、
    それらが舟のシチュエーションから乖離することなく、
    一方で縛られすぎることなく、物語が歩みを進めていく。

    よしんばそれが社長の盗み喰いのような即物的な笑いであっても、単純に薄っぺらくしないへたれな葛藤が役者の演技にしっかりと紡がれているし、
    男女たちの入り組み方や、隠すものや抱くものも、役者達が織り上げるロールの端々にしなやかに裏打ちされていて。
    切り捨てきれない小さな会社での人間関係にしても、
    節度を失ったり醒めたり不器用だったりの男と女の関係にしても、それぞれが背負うものや、様々な秘密とともに交わりあった人物達のありようにしても、
    不意に晒され、まぜこぜに崩れ、
    にもかかわらず舟に居続けることを強いられる姿が、
    カオスっぽいのに、不必要に絡まることなく、
    とてもクリアでとんでもなく面白い。
    さらには、役者達ひとりずつに
    漂流と性病や関係から訪れる、
    それぞれの担う狂気の見せ場があって、
    そのつきぬけが舞台のさらなる奥行きを作りだしていくことにも瞠目。

    全てが解けての最後のシーンに
    消えていったロールたちの気配や想いが、
    場から霧散することなく切なさとともに残って。
    この舞台、顛末に観る側を縛る力と、
    ルーズに刹那の感触を削ぎだす力のバランスが
    抜群によいなぁと感じる。
    しつこいようですが、本当におもしろかったです。

    できれば四面それぞれのエリアから観たかったなぁ。
    観終わって、狂気のありようであっても、よしんば嘔吐シーンであっても、
    いろ他のエリアからみると
    一味異なるミザンスに込められたものが訪れる予感があって。
    それぞれの方向に溢れ出す舞台の印象を
    全て観ることができなかったことが残念に思えたことでした。

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    2013/12/10 12:27

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