Crossing,Christmas,Clearance.クロッシング クリスマス クリアランス 公演情報 バンタムクラスステージ「Crossing,Christmas,Clearance.クロッシング クリスマス クリアランス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    薬莢…「C.C.C.」本編
    大切な家族を守ろうとして男がとった行動は、思いがけない真実に辿り着く。
    1960年代、移民が生き抜くための知恵とはいえ
    イタリアンギャングとアイリッシュギャングの抗争が続くボストンを舞台に
    あるユダヤ人一家の歴史を紐解いていく緻密な脚本が見事。
    バンタムらしい豪快な銃声が響く一方、家族への情愛や仲間への信頼が
    細やかに描かれて切ないストーリーになっている。
    銃声の後、薬莢が転がる乾いた音がたまらない。
    “やっちまった”感と何とも言えない“撃つ者の痛み”が残る音だ。

    ネタバレBOX

    玩具屋から身を起してビデオゲームメーカーCEOになったアルフレッドが
    廃墟となった倉庫で自分の半生をルポライターに語るところから始まる。
    虐げられたユダヤ移民の一家を守るために自分の父がやったこと
    それを許せなくて兄がとった行動、それを見ていた子どもだった自分。
    全ては、一家を取り巻く容赦ない“歴史の日陰”で起こった出来事だった・・・。

    サスペンスだから詳細は語らないが
    登場人物がとても上手く整理されていて洋物特有の(名前とか)わかりにくさがない。
    客席には人物相関図が配られているから良く分かるが、
    それが無くても充分把握できる。
    暗転せずに整然と行われる場転(と言ってもパイプ椅子と折りたたみテーブル)
    のおかげで複数の場所・過去と未来が自在に切り替わる。
    このスピーディーさも“映画のよう”と評される所以だろうか。

    登場人物がとても魅力的。
    ある決意を持ってギャングの世界に足を踏み入れて行く
    兄レナード(福地教光)の、明るい屈託のなさと悲壮な決意が同居する人物像が立体的。
    レナードのキャラが、事の明暗とリンクして結末の救いにもなっている。
    この人が泣く場面は説得力があって、追いつめられた人間の苦悩が浮かび上がる。

    弟のアルフレッド役の栞菜さん、兄に憧れ誇りに思う少年らしさが素晴らしい。
    小柄なせいかいっそうリアルで可愛らしい。
    イタリアンギャングのボス、スタイリッシュで冷静なカルロを演じた
    松木賢三さん、一瞬見せた狂気が弾けていて素晴らしかった。
    その手下の殺し屋カレンダー役斉藤厚さんのたたずまい、立ち姿、帽子の被り方、
    舞台上いつどこにいてもきれいな姿勢にはほれぼれした。
    アイリッシュギャングの酒場を仕切るヒューズのキャラも素晴らしい。
    演じるドヰタイジさんの声と、度胸の良いキャラがぴったり。
    殺陣師でもあるというドヰタイジさんの別の顔も観てみたくなった。

    おもちゃが喋るという設定は、クリスマスファンタジーらしい展開で
    暗くハードな世界とセットになって一層切なさが増すのかもしれないが、
    私の好みからすると少し緩くなって物足りなさも感じる。
    あの、もっと死ねばいいとかバンバン撃てとかそういうことじゃなくて…。
    例えば「ルルドの森」の(これしか観てないので比較対象はこれのみ)
    犯罪心理に迫る分析とか、わかっていながら傾いていく人間の弱さとか
    そういう展開に息詰る“暗い緊迫感”があった。
    あれが他に無い新鮮さだった。
    基本あの感じを突き詰めて欲しいというのが個人的な好み。

    レナードが持つ少し細身のあの銃は
    コルト○○とかワルサー○○とか名前があるんだろうか?
    ガンマニアじゃないのでよく分からないが、そんな情報も
    史実に沿って教えてもらえたら面白いと思う。

    個性的で完成度の高い劇団が東京に来てくれて、楽しみが増えた。
    次に暗闇で薬莢の音が響くのは来年3月、待遠しいなぁ。

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    2013/12/09 09:34

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