満足度★★★★
良い演劇を観られた。
つか作品は,とても良い演劇の窓口かもしれない。今回は,浅草で『幕末純情伝』を観た。
『蒲田行進曲』の中では,大部屋で一生うだつの上がらぬ底辺役者の苦しみが見えた。次の『飛龍伝』では,中卒自衛官の苦悩がわかった。『二代目はクリスチャン』では,荒んだ家庭に生まれたがゆえに,犯罪に進んだ連中の悲哀が理解された。
では,『幕末純情伝』には,何が感じられただろうか。どちらかというと,勝と,龍馬と,沖田の話であったが,そこには,やはり日野の百姓たちの世界が見えた。主人公の沖田は,なぜか女性だったが,彼女をさて,日野に連れていったらどうか?という話になる。しかし,日野の田舎もそんなに甘くはない。病人は忌み嫌われるだろう。さらに,育ての母親殺しがばれたら,村になんかいられないさ。このあたりの会話は,田舎というものの閉鎖性を良く表現していると思った。
つかの作品には,いつも弱者・底辺で生きるものの生の声が人の心を打つ。私は,そのあたりが凄いと思う。今回も,若手を中心とした役者によって,見事に演じられていたように思われた。良い演劇を観られた。劇場は,雑居ビルの倉庫的な場所で,お世辞にもいい環境ではなかった。役者が舞うと,腰かけにまでびりびりと響いた。