満足度★★★★
思索と遊戯
アクラム・カーンさんとシルヴィ・ギエムさんが自身とダンスの関わりを語りながら踊る作品で、内省的な雰囲気の中に遊んでいる様なユーモアがあり、豊かな広がりが感じられました。
所々で台詞が差し挟まれるものの全体を貫く物語がある訳ではなく、ドラマとしてのカタルシスが無い構成ながら、ダンスと音楽自体の魅力で引き込み、70分間が短く感じられました。
向かい合って両手を波打たせるように踊ったり、カーンさんの腰にギエムさんが脚を絡めてぶら下がりインドの神様みたいなフォルムになったりと、アジア的な要素が洗練された形で表現されていて美しかったです。
ラストでは16分の15拍子の畳み掛けるようなリズムに乗せて縄跳びの様なムーヴメントがユニゾンで展開し、躍動感が素晴らしかったです。
台詞は真面目な内容の時もあれば、ラフな雑談みたいな時もあり(字幕が表示されない箇所もあったのでアドリブだったのかもしれません)、芝居がかっていない自然な雰囲気が和やかで良かったです。
ギエムさんの研ぎ澄まされた身体コントロールが圧巻で引き込まれました。カーンさんのソロはインド古典舞踊の要素が強く、切れの良い動きが気持良かったです。
西洋・東洋混成の5人のミュージシャンによる生演奏が独特の響きを生み出していて、特にスペインの古い舞曲「ラ・フォリア」の和声進行の上で、インド的な節回しで歌われるのが印象的でした。