感傷的だが引き込む思春期版『不思議の国のアリス』だ
女子高校生の現実を、ファンタジー色が強い空気感で優しく包み込む時間は何とも心地良い。途中、いびき が二人程の観客から劇場に響いたのも、「手のひら」に覆われた結果だろう。この感触は、まさしく女子高校生•篠原望海(光希沙織)の慕ったババちゃん(芹沢結海子)へ通じる 温かさである。
ドリンクバーで生ビール一杯注文した私は、白い幕とカラフルな段ボールのセットを確認し、場違いを思い知らされた。多くの観客はオレンジジュースやカシス系統のストロー付きドリンクを手にする。ここは野球場ではない。だが、生ビールの充満する紙コップを手にしたことは正解だった。望海を演じた光希の しとやかな姿が「絵本」に終わらせない大人舞台を造ったのだ。