息をひそめて―シリア革命の真実― 公演情報 ワンツーワークス「息をひそめて―シリア革命の真実―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    メッセージ性の強い
    メッセージ性の強い芝居。

    シリアで起こっている現実に目を向ける意義深い作品。

    ネタバレBOX

    メッセージの内容には強く共感するが、演劇として面白いと思わなかった。

    実験的な側面でも期待したが、普通の芝居だった。

    取材に基づき、すべて実際にそこにいた人の、その言葉を基に作品化しても、それは結局フィクションである。それは、ドキュメンタリー映画監督の佐藤真や森達也が「ドキュメンタリーはフィクションである」と言うのと同じだ。撮影の段階で選択が行われ、編集の段階で更に選択が行われるからだ。それは、活字も同様で、取材対象は選択され、脚本化の段階で更なる取捨選択がなされる。
    さらに、舞台では、それを役者が再現するというフィクションも加わる。

    だから、「本当のことなんてない」と単純に批判したい訳ではない。
    だからこそ、その現実を扱うことそれ自体への(自分の行為への)批評性が必要だと言いたいだけだ。

    その点への自覚は、まず脚本において、そして演出においても薄かったように思われる。

    ただし、悪の正体が茫漠として明確ではない日本や欧米圏と違って、
    シリアの現実は、悪の正体がある程度は明白なので、
    悪を断罪する批判としての作品の意義は充分にあったと思う。

    それでも、社会主義リアリズム作品やプロパガンダ作品と同じで、作品として面白くなかった。

    終始ひとつのメッセージが反復される形だった。

    現実に基づこうが、フィクションなのだから、もっと物語化するか、
    又は、逆に、すべてをより断片化するなど物語化に抗う脚本や演出をすべきだったと思う。

    この芝居で面白かったのは、物語のはじめに暴力ではない形での革命を目指していた者が、家族や友人を虐殺されたことによって、政府軍やその協力者(密告者)を殺してやると言いはじめた部分だ。
    これは、まさしくドラマである。実際に起こったことを繋げたにしても物語(フィクション)である。

    結局、この芝居も、上に書いた場面がラスト(の一つ前なのだが、ほぼラスト)であり、物語化によって強度を付けているのだから、もっともっと作者の構成力によって作品の強度を高めるべきだったと思う。
    その構成も、個人的には物語化の方向ではなく、物語化に抗う方向の作品が観たかったのだが、、、。
    今作品はどっちつかずの印象。

    と色々書いたが、
    作品のメッセージには強く共感している。
    酷いシリアの状況がなんとか良い方向に向いてほしいと願っている。
    具体的に私には何もできないけれど、そのような現実があるということを先ずは知るということは極めて重要なことだと思う。

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    2013/11/11 23:57

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