森の別の場所 公演情報 時間堂「森の別の場所」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    価値の置き方
    3時間もの長編舞台は初めてではないが、
    海外の古典だし、どんなものかと思っていた。

    全三幕、一幕後に中入り。

    特に中入り後の二幕、三幕は緊迫感があり、
    時間があっという間で見応えがあった。

    ネタバレBOX

    南部のアラバマ州バーデンで
    南北戦争後に財を成したハバード家。

    一代で今の地位を築くも、強引なやり口で
    街中から敬遠されている父、マーカス(鈴木浩司)。

    戦争後から心を病みつつ、
    黒人への教育を夢見る信心深い母、ラヴィニア(ヒザイミズキ)。

    父の右腕として会社を支えつつも、
    野望を秘めた野心家の長男、ベンジャミン(菅野貴夫)。

    黒人を襲って逮捕されかけたり、
    売春婦に熱を上げたりと思慮の浅い次男、オスカー(松井美宣)。

    父から溺愛されていることを利用しつつ、
    没落一家の将校との結婚を夢見る長女、レジーナ(直江里美)。

    彼らと関わる人々との駆け引きを描く。


    各々が自分の野望を叶えたいがために
    相手を巧みに利用しながら、出し抜こうとする。

    そんな様子だから決して誰もが相容れることはなく、
    好意を寄せる相手にも思いは伝わらず、
    すれ違っている様が何とも無常。

    「人は自分が信じたいと思うものを信じる」

    この台詞が表している世界観は
    今の世にも通じることだろう。

    だけど時代も違えば、国も状況も違うので、
    現代とのリンクはあまりないと感じだ。

    戯曲としては平田オリザ先生のように言うなら、
    母のラヴィニアという内部の存在が
    冒頭からの大半を「厄介者」で誰もが関わりたがらない、
    外部の存在のような扱いを受けているのに、
    終盤でマーカスの過去の罪を暴く証人であり、
    証拠も握っていると発覚すると、
    とたんに誰もが重要視して、
    すり寄る内部の存在に変わるのが面白い。

    母のラヴィニアの価値の置き方。

    妻として母としてぞんざいに扱った者ほど、
    変わった後の価値の反転が大きい。

    人や物事を一方からしか見ないために、
    他に持っていたり、普段隠れて見えない価値、魅力に
    気付かない虚しさを感じさせられた。

    役者としては、
    捉えようのない母、ラヴィニアを演じたヒザイミズキ、
    情けない次男オスカーを演じた松井美宣、
    オスカーが恋する売春婦ローレットを演じた長瀬みなみが印象的。

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    2013/11/08 07:47

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