満足度★★★
やはり役者か
青山円形劇場という、多方面の視覚からさらされる演出の難しい劇場でしたが、入ったとたんに「おおーっ!」と思わせる美術の作り込みにはドキドキしました。外側の壁一面にぐるりと張られた、各場面ごとの題を書いた半紙も、まるで小説の章立てを読んでいるようで、想像を膨らませるいいアイデアだと思いました。
ただ、その期待以上のものが、劇としては観れなかった。それは、赤澤ムックさんが書く、イメージがイメージを引き寄せる独特のせりふ、淫靡で猥雑で、時に残酷な鋭さを持つ詩的な言葉の力に、役者が追いついていなかった、ただそれだけだと思います。やはり下総さんやオイスケールの星さんのような異形の存在感があってこそ、言葉の飛翔が生きるのであって、大沢健さんや少年(半少女)役の女優さんにはもっと「変身」してほしかった。空間に魔力があっただけに、惜しいです。