明日への蒸気を出し切れない青年達
真珠湾攻撃の機密任務にある、日本海軍潜水艇の内側をコメディ•タッチも交え描く。
第二次世界大戦前夜の艇内だけあり「お国のため」の雰囲気は漂う。
だが、対米戦を目の前にした悲壮感はなく、鋼鉄を歩くのは いつの時代も変わらない青年だった。
『あたっくNo.1』(同名小説が原作)のタイトルは不適切かもしれない。敵艦撃沈を そのように例えたなら。
私が舞台を観て述べることがあるとすれば、恋青年だとかを含め、「まっすぐ打ち向かう」心こそ『あたっくNo.1』の意味だったのではないか、という憶測である。
登場人物の見えざる心の扱いが巧み で、私たち は 艇内すべてを把握できない構成である。当然、海軍組織の暴力性を示すし、厳しい序列も同様だ。
古来より、文学者が「恋」を記す時、それは貴族階級のモチーフであることが多かった。宮廷という閉ざされた空間、貴族階級という限られた登場人物が、「恋のシンボリック化」にふさわしいからだ。今作『あたっくNo.1』でも、鉄拳制裁や序列の中にこそ見え隠れする恋、友情、家族観などのヒューマニズムが魅力的だった。
宮廷ではなく潜水艇である。
貴族階級ではなく海軍兵員である。
ところが、私達を魅力させる構造としては何ら変わらない。