満足度★★★★
人間の欲望を大胆に
マーロウ作の劇を初めて鑑賞した。よくシェイクスピアと並べられて評される人物だが、シェイクスピア劇よりも、より単純で大胆という印象。本作ではマーロウの権力なんてくそくらえ、というような反骨精神のようなものも感じる。
二つの愛(王とギャビンストン、モーティマと王妃)とそれぞれの権力闘争は、一体愛と権力のどちらがその者にとって優先だったのか。上記4人は決して割り切ることなく愛も権力も両方維持しようとする。ここに、人間のエゴイズムが如実に現れていて、昔も今も、人間って変わらないんだなあと思ったりもした。欲望こそ、人間の根源的な「生」を突き動かしているものなのかもしれない。
構成としては、舞台構成は見事であった。服装を現代的にしたり、一面金色の壁、戦闘シーンの紙吹雪など、「おお、すげえ。面白い。」と何度も思った。役者の演技はどれも優れているが、王や家臣の欲望がこれでもか、というくらい直情的に訴える必要があったためか、終始役者は声を張っていた。演出には理解できるが、見る側としては、とてつもなく疲れた。評価できない点としては、この一点のみ。
古典をこんなに親しみ易くできるのは、森さんの手腕にほかならない。