中野の処女がイクッ 公演情報 月刊「根本宗子」「中野の処女がイクッ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    女性の、、、
    女性特有のいや~な感じを、女性である作者が自己批評的に描き、それを女性の役者が演じている。
    (勿論、男性には男性特有のいや~な感じがあるのも自明なことで、差別的に言っているのではありません、悪しからず。)
    最後の方では、ちょっとテーマが変わってくる。
    そこからの方が物語としては面白かった。

    ただオールラストが私には茶化して終わったように思えたので、
    満足度としては★3ですが、その点は不問に付せば★4。
    (ネタバレの最後に、オールラスト部の意味について、過剰な深読みを試みました。おそらく誤読ですが。)

    ネタバレBOX

    まず、女性特有のいや~な感じについて。
    私が男性だからだろうか、「女性ってそういうところあるよな」とは思ったものの、「うえ~」となるほど、嫌な感じは自分の中に生じなかった。

    それは、私がもっといや~な目に現実であっているから、これくらいのことでは感じなくなっているのか、それともその逆で、男性だから、女性同士の微細な毒まじりのやり取りが感受しきれていないのか、、、。

    いずれにせよ、日常の中に見え隠れする女性のいや~な部分という意味ではとてもよく描けていたと思う。

    問題は、最後の方で、テーマがグッと変わってくる部分から。
    女性同士の人間関係のテーマから、大きな事象を前にすると問題の本質がすり替わってしまうというテーマにシフトする。

    まず、〈じゅん〉の財布が盗まれ、ゴミ箱から発見されたものの、誰の仕業かわからずにいる。そして、〈もなか〉がやったのではないかという噂になる。それも、何の根拠もなく、リーダーヅラされるのが嫌だったり、彼の元カノが〈もなか〉だという嫉妬からきているものだったり。だが、実際は〈イブ〉の仕業だったとわかる。それでも、〈イブ〉は一切悪びれる様子もない。親からの仕送りもありお金には困っていなく、単に面白そうだったからやったという。それも、その金を火で燃やしてしまったと。その様子に、なけなしの家賃6万5千円をとられ、その上、離婚して別れて住んでいる父からもらった大切な財布さえ汚くされてしまったた〈じゅん〉はブチギレる。
    〈もなか〉も〈まゆり〉も一緒に〈イブ〉を責める。
    その瞬間、青森で震度7の大地震が起きる。イブの実家は青森だという。
    それまで、〈じゅん〉と一緒に〈イブ〉を責めていた〈もなか〉も〈まゆり〉も、状況が状況だからと〈イブ〉に優しくし、それでも責める〈じゅん〉をむしろ非難する。
    「こんな状況なんだから、そんな小さなことくらいで〈イブ〉を責めないで。人の痛みがわからないの?」というように。

    それまでの、女性の人間関係などはとても丁寧に描かれていたのに、この話の展開の部分は、異常にテンポが速く、描き方が雑だなと思った。
    〈イブ〉には本当に何の理由もなかったのか?理由なき犯罪と言われるものの多くは、広い視野で見れば、何らかの理由は見つかるものだ。より広い視野で見た時、家族関係や同棲している彼との関係など、何かしらのストレスか何かがそのような行動を引き起こしたのか、、、など、、、深読みすれば、そうも考えられるが、そのように臭わすものは何もない。テンポも速すぎて、色々考える暇もない。

    それでも、この問題提起はとても素晴らしい。

    このように、別の問題が起きたらそれまでの責任を全く無かったことにするというのは、一般的な人間関係でも、政治的な問題でもよくあることだ。

    特に政治では、原発事故が起これば、それまで原発推進(黙認)をしてきた責任などなかったことになる。戦争だってそうだ。戦争万歳と言い、侵略していた加害性は無視され、戦後に被害者としての姿だけが残る。あの責任はどうなったのか、、、国も、国民も。

    作者に社会批評性があって書かれたことかはわからないが、いずれにせよ、私にはそう感じられた。震災が問題提起のきっかけだという点も、そのように感じさせる要因となっている。

    ただ、この場面は足早であり、更にその次に別の展開となる。

    実はその財布をひろってくれた〈ドミニク〉(メイド喫茶に来るお客)が現れ、彼は「〈じゅん〉ちゃんは僕のこと好きでしょ?」となる。(〈ドミニク〉は震災には全く動じていない。)財布の中に〈ドミニク〉と一緒に撮ったチェキ(インスタントカメラで撮った写真)が大量に入っていたからわかったという。そこで〈じゅん〉はその気持ちを認め、「その写真でオナニーをしていた」などと〈ドミニク〉に気持ちを打ち明けて幕。(キスしたんだっけ?ラストシーンなのに覚えていない)
    中野の処女とは〈じゅん〉のことなのだろう。

    ラストシーンの意味がわからなかった。
    ラストの前に、とても複雑な罪の問題が提起され、それをスカすように、それまでのテーマと関係ない恋愛の話でオチがつく。

    意味があるとすれば、そこで初めてタイトルの意味がわかるということ。前の方でオタクをバカにしていた場面があり、その差別意識をここでひっくり返していること、、、でも、これだけでは筋がまとまらない。

    私なりに、過剰に深読みし、理屈づけてみる。

    〈じゅん〉は皆の前では、一緒になってオタクをバカにしていた、もしくはそのような発言を黙認していたにもかかわらず、実際は好きだった。
    これは、本音を隠して集団に合わせ、本当は好きな相手をさえ、皆と一緒になってバカにする(黙認する)という人間の本質を問いただしているともとれる。それは女性の集団性というだけに留まらず、人間全般の集団性(特に日本には強い)を問うている。ファシズムの問題を。
    そすだとすれば、前のシーンの問題提起と重なる。

    または、皆が震災で右往左往する中で、価値観が一変していくが、オタクという一つの価値観をしっかり持っている〈ドミニク〉だけが、まったく変わらない日常を送っている。
    この解釈でも前の問題提起と繋がる。

    だがこれは、私の過剰な深読みだろうな。

    0

    2013/10/19 00:42

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大